広報誌「かけはし」
 
■2012年4月 No.487
時評

柔道整復施術等の適正化に本腰を

− 平成24年度療養費改定を契機に −


 4月から診療報酬が改定されたが、続いて、近く柔道整復などの療養費の改定が予定されている。
 柔整療養費は、ざっと国民医療費の1%を占めるといわれてきた。厚労省の推計では、平成21年度(2009年度)の国民医療費が36兆67億円、柔整療養費が4023億円となっている。占有率が1%を超えているのは近年、柔整療養費が国民医療費よりかなり高い伸び率を示し続けてきたためだ。
 また、はり・きゅう療養費は293億円、あん摩・マッサージ・指圧療養費は459億円で、総額は柔整療養費より1ケタ少ないが、伸び率は柔整療養費より高くなっている。
 柔整療養費増加の背景には、柔整師数と施術所の増加がある。22年末の就業柔整師数は5万428人、施術所数は3万7997カ所で、ともに10年前の1.6倍となった。当時の国の規制緩和政策から柔整師養成学校の設立が進み、昨年までに全国に約100校と激増、昨年は約4600人の国家試験合格者を出している。
 都道府県別の就業柔整師数は、東京、大阪、神奈川、埼玉、千葉の順で多いが、人口10万人当たりでみると大阪が圧倒的に多い。また、都道府県別の施術内容をみると、受療者1人についてからだの3カ所以上の部位を施術したとする請求が、大阪では請求件数の70%を超えている。全国平均は50%弱、東京は40%ほど、最も低い岩手、山形は20%を割っている。地域によって受療者の打撲や捻挫などの程度にこれほど差があるとは考えにくい。一部が濃厚な施術となっているのではないかとの指摘もあり、施術者側の自制を求めたい。
 国民医療費を上回る柔整療養費の伸びや多部位請求の地域差といった現状に対して、内閣府の行政刷新会議は21年にその適正化を指摘した。状況を踏まえて、前回22年度の療養費改定では、多部位請求の見直しを始めとした適正化対策が何点か盛り込まれた。具体的には、@3部位目の給付率の80%から70%への引き下げ、4部位目は33%から0%へゼロ算定A領収証の無償発行と、希望する人への明細書発行の義務化B柔整レセプトへの記載事項の追加(骨折、脱臼に関する医師の同意、および施術日)C不正が発覚した施術所の開設者も問責―などである。
 前回の改定後、会計検査院は厚労大臣あてに@療養費支給の算定基準の明確化A保険者等による点検体制の強化B内科的疾患、および単なる肩こり・筋肉痛が療養費支給対象外である点の周知徹底―などの必要性を報告した。厚労省は今後、長期的視点で柔整療養費のあり方を検討する公的な場を設置する方針だ。
 今度の療養費改定では、より革新的な適正化対策が盛り込まれることを望む。健保組合としても、加入者に対する柔整療養費の通知運動をより活発化させることや、健康保険適用外の施術などについてのポスターやパンフレットによる啓発を活発に行うなどをして、ぜひとも保険者機能を発揮したいところである。
  (T・M)