広報誌「かけはし」
 
■2011年9月 No.480
時評

国民の視点に立ち、丁寧な説明を

− 共通番号制度の導入 −


 「社会保障と税の一体改革成案」が6月30日に公表された。同じ日に「社会保障・税番号大綱」も決定された。この共通番号制度は国民一人ひとりに番号(マイナンバー)を付けて、社会保障や税などの個人情報を総合的に管理するとともに、社会保障の一体改革や税制改革を実現するうえでの前提条件となるものである。
 大綱によると、健康保険証や年金手帳などの機能を一元化したICカードで各種の社会保険サービスが受けられるようになる。医療・介護・年金・福祉・労働保険・税務の6分野で活用する。さらに、東日本大震災のような大災害時には、預金通帳をなくした被災者の預金引き出しなどにも使えるようにする。
 共通番号制導入に関しては、これまでも種々賛否の指摘がなされてきた。しかし、利便性はあるといえる。
 例えば、一つの番号に医療や介護、所得などさまざまな情報を結んで、給付の漏れを防ぐことで公平感を高めたり、被保険者等の資格の取得・喪失、住民票などの手続き時の書類を減らしたりすることができる。また、「社会保障と税の一体改革成案」で導入が検討されている「総合合算制度(仮称)」(医療、介護、保育など自己負担額を世帯単位で合算し、所得に応じた上限を設定するもの)や、高額医療・高額介護合算療養費制度の現物給付化に活用できるメリットがあるとされている。
 さらに、医療機関で医療保険の資格確認がオンラインでできるようになるため、医療費の過誤調整の事務処理が軽減され、審査支払機関の事務コストの軽減にもつながる。
 その一方で懸念もある。人為的ミスや不正アクセスで、番号の不正利用や個人情報の流出の恐れがないのかなどである。これに対して国は内閣総理大臣のもとに番号制度における個人情報の保護等を目的とする委員会を設置して監督していくとしている。しかし、国が個人情報を一元的に管理すること自体へのアレルギーも少なくない。
 また、大綱では、共通番号制導入に必要な運用システムの構築・改修の費用とその負担者、そして事務費の軽減による経済効果などは示されていない。
 とはいえ、国は2015年以降の利用開始に向け、今秋以降にも法案を国会に提出する方針である。
 まだまだ共通番号制度に対する国民の認知度や理解度は低い。したがって、国は大綱の趣旨である主権者たる国民の視点に立って、各界から広く意見を聴き、国民に丁寧な説明をしながら、議論を進めてもらいたい。
  (K・M)