広報誌「かけはし」
 
■2011年4月 No.475
時評

「組合のメリット」さらに活かそう

− 4年目迎えた特定健診・特定保健指導 −


 特定健診・特定保健指導が始まって4年目を迎えた。厚労省の平成21年度事業実施状況(速報値)によると、健保組合全体の特定健診実施率(特定健診受診者数の対象者数に対する割合)は63.3%で前年度に比べて3.8ポイント上昇。特定保健指導実施率は12.4%で前年度に比べて5.6ポイント上昇した。
 他の保険者の状況をみると、特定健診実施率は共済組合65.4%、市町村国保31.4%、協会けんぽ30.3%。特定保健指導実施率は市町村国保21.5%、共済組合9.4%、協会けんぽ7.2%となっている。
 この結果、健保組合の実施率が他の保険者より総じて高いことがわかった。一方、市町村国保での特定保健指導実施率が他の保険者より高い。しかし、これは特定健診実施率が低くて特定保健指導実施率算定の分母となる対象者数が伸びないことの反映とみられ、必ずしも事業推進による結果ではないようである。また、同制度の第1期最終年度である平成24年度の保険者全体の目標値は、特定健診実施率70%、特定保健指導実施率45%だが、現状からみると目標達成は厳しいといえよう。
 振り返ると、健保組合での健診・保健指導事業の取り組みには、長く地道な努力の跡がある。それにより、時代に即して加入者の健康づくりに効果をあげてきた。背景に、@職場環境に応じた健康管理対策が打ち出されるA労働安全衛生法にもとづく定期健診や、人間ドックなどと組み合わせて実施することができるB労使双方の理解と参画により実施されるC広報から健診実施に至るまで職制を通して徹底されるD職場仲間の“顔がみえる”ため、キメ細かな健診後のフォローができる―などの利点があるからだ。
 これらを企図することは他の保険者ではむずかしく、健保組合の大きなメリットだ。一方で、健診と保健指導による費用対効果判断に関する疑いの声を、少なからず耳にする。
 だが、東北大学大学院の辻一郎教授の研究などにより、健診の効果は立証されている。辻教授の研究は、一定エリア内の住人の詳細な生活習慣データ・健診データとその後の死亡リスク、生活習慣病などの罹患リスク、医療費との関連を10年以上追跡調査したもの。中長期的視点から特定健診・特定保健指導は国民の健康度アップと医療費の節減に有効であろう。
 平成20年度からの特定健診・特定保健指導の制度化により、健保組合の保健事業は内容を一新して再スタートした。これまで比較的手薄だった中高年層の被扶養者への支援体制の整備も進んできた。健保組合の財政は、高齢者医療制度への法外な納付金・支援金の拠出で火の車だ。けれども、加入者の健康づくりは健保組合の本来事業であり、今後も他の保険者の模範となって、その推進にあたりたい。
  (T・M)