広報誌「かけはし」
 
■2011年3月 No.474
時評

社会保障・税制改革をやり遂げる覚悟で!!

− 党派を超えた建設的な議論を −


 人口減少、少子高齢社会という言葉を耳にするようになって久しい。厚生労働省が公表した人口動態統計の年間推計によると、平成22年の自然減が初めて10万人を超え、過去最大の12万3000人になる見通しが明らかになった。自然減は、平成17年から始まり、平成18年には増加となったものの、19年以降は減少の一途をたどっている。
 それにともない、人口構造も変化し、総務省がこのほど公表した推計によると、65歳以上の人口割合は、総人口の約23%に達したということである。さらに、高齢化のピークといわれる平成37年には約29%に増えると見込まれる。
 このような高齢化により、国民医療費は、毎年約1兆円ずつ増加しており、持続可能な社会保障制度のための改革は、待ったなしの状況である。
 そんななか、昨年末に厚生労働省の「高齢者医療制度改革会議」は、後期高齢者医療制度廃止後の新制度に関する最終報告をまとめた。
 その中身は、75歳以上の8割は国保に、残る2割の会社員や扶養家族は被用者保険に移行することとし、70〜74歳の医療費の窓口負担引き上げや、75歳以上の低所得者に対する保険料の軽減措置縮小といった高齢者に一定の負担を求めること、また被用者保険については、総報酬割の全面導入が打ち出されている。新制度への移行は見えないが健保組合の負担は、また上積みされるおそれがあり、さらなる財政悪化が懸念される。
 結局は、負担構造の枠組みのみが変わるに等しい内容であり、公費の拡充と安定財源の議論が十分なされていない。医療保険財政の窮迫度を正しく認識し、これらについても速やかに検討することが必要だ。
 1月14日に菅“再”改造内閣が発足した。社会保障・税制改革をにらんで経済財政政策担当相を党外から起用した点が、目玉の一つとして注目されている。
 改造後の記者会見ではその狙いについて「安心できる社会保障制度と持続可能な財源の議論が必要だ。今回の起用は内閣改造の一つの大きな性格の表れだ」と述べ、社会保障と消費税引き上げを含む税制の一体改革を政権の重要課題として推進する決意を強調した。
 政府は、6月をめどに消費税や社会保障について抜本改革案をまとめるとしている。衆参ねじれ国会の下、その実現が危惧されるが、国の命運を左右する重要な課題であり、党派の垣根を越えた国民のための建設的な議論を期待する。
 そして、いかなる事態があっても不退転の決意をもって、掲げた改革をやり遂げていただきたい。
  (T・A)