広報誌「かけはし」

■2010年10月 No.469
 
 
健診の結果報告書をいかしていますか?

〜 高血圧・脂質異常症・糖尿病によって

心筋梗塞・脳梗塞にならないために 〜

 9月9日、大阪商工会議所で健康セミナーを開催。久保内科クリニック 院長 久保正治氏が「健診の結果報告書をいかしていますか?〜高血圧・脂質異常症・糖尿病によって心筋梗塞・脳梗塞にならないために〜」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
 

 

久保 正治 氏

◆はじめに
 健康診断の報告書は高血圧、脂質異常症、糖尿病などの状態把握に役立つのですが、「経過観察が必要です」とか、「治療が必要です」などと数年にわたり指摘されているケースに出くわします。せっかくの健診の報告書をいかしていないのです。
 これらは自覚症状がとぼしいために安易に考えて放置しがちです。重症になると高血圧では頭痛、不眠、動悸、息切れが、糖尿病では全身倦怠感、口渇、やせのほかに足のしびれなどの糖尿病性合併症が出現します。しかし、脂質異常症はほとんど自覚症状がありません。心筋梗塞になってはじめて認識するといったこともあり得ます。

◆高血圧
 高血圧は発症頻度の高い疾患で、10人中3〜4人は高血圧です。肥満や塩分摂取過多の是正が第一ですが、それでも高い場合には降圧薬を積極的に利用すべきです。最近は副作用が少なく合併症を防ぐよい薬が多くあります。「薬を飲まないことがよいこと」と誤解して血圧を高いままにしているのはよくありません。オリンピックは参加することに意義があるといわれていますが、血圧は下がっていることに意義があります。起床時血圧測定により、自分で血圧を管理することも有効です。

◆脂質異常症
 脂質異常症は、かつては高脂血症といわれていたものですが、最近はこう呼ぶようになっています。というのも、HDLコレステロールは低いと悪いので、「高脂血症」では都合が悪いだろうというのが理由です。中性脂肪の上昇原因は体重過多、アルコール多飲、運動不足などで、この改善には生活習慣改善が重要です。コレステロールには有効な薬剤がありますが、中性脂肪にはよい薬がないのです。

◆糖尿病
 糖尿病も生活習慣の改善が大事で、それなしには改善は見込まれませんが、2009年末に登場した薬は期待がもてそうです。

◆その他の病態
 また、「メタボ」として、流行語大賞にもなったメタボリックシンドロームの克服は大変重要です。内臓脂肪蓄積を背景として、血圧、血糖、脂質などの異常がわずかずつ重なって起こり、心臓、血管系疾患発症率が高くなる病態です。その一つひとつの異常は軽度でもリスクは高いので生活習慣改善が重要です。労災保険がサポートする労災二次健診もメタボの病態を早期にとらえて、心臓血管系の異常を精査するものとして大変有効です。
 もう一つ重要なものは禁煙です。喫煙は動脈硬化性疾患をはじめとして咽頭がん、肺がん、閉塞性肺疾患など万病のもとです。しかも、本人だけではなく家族、同僚にも影響します。今年の秋にはタバコの大幅な値上げが予定されているようですので、それをきっかけに禁煙に誘導するよいチャンスと思います。

◆重大な疾患の発症予防
 心筋梗塞や脳梗塞は、急性期を乗り越えても後遺症が残ります。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの原因疾患をしっかり治療して、発症を予防したいと思って診療しています。

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