広報誌「かけはし」
 
■2010年4月 No.463


 加藤会長あいさつ

 政治は、昨年9月の政権交代で大きな変化が起きましたが、先行きどうなるのか、混迷のなかにあります。また、経済は、一部で厳しいながらも下げ止まりかとの見方もありますが、全体としていぜん厳しい状況に変わりありません。
 ところで、われわれをとりまく四囲の情勢は、少しずつ形を変えながら厳しさを増してきています。基本的な制度の改革問題から日常的な問題まで、複雑多岐にわたって問題が山積しています。
 このなかから二点に絞って、私の考えをお話したいと思います。
 まず第一点は、協会けんぽへの国庫負担の肩代わり問題です。すでに国会には「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部改正法案」という法案が上程されており、このなかに肩代わり案が入っています。われわれ健保組合は、断固反対の立場で運動を続けてきました。大阪連合会としても、2月12日には街頭活動を行い、私自身も淀屋橋で皆さんとともにビラ配りに参加しました。
 なぜわれわれは反対なのでしょうか。まず、協会けんぽの財政問題は政府の責任であって、その「つけ」をわれわれに回すのは筋違いであり、国はこのような理不尽な行為を決してしてはならないからです。第二には、この肩代わりは協会けんぽの後期高齢者支援金の一部を健保組合が負担するという形をとっていますが、この負担について、いまの頭割りに加えて総報酬割りという方法を導入しようとしています。これは制度全体に関わる重大な変更であり、まずきっちり議論するべきであって、拙速に導入してはならないからです。第三には、健保組合の財政は悪化の一途をたどっており、財政的支援が必要なのはわれわれであって、肩代わりをする余裕は全くないからです。
 いま、厚生労働大臣のもとで「高齢者医療制度改革会議」が開かれており、この夏には中間まとめ、年内には総まとめを行うことになっています。3月8日の会合には、厚労省から65歳以上のほぼ全員が国保に加入するというケースの財政試算が示されました。公費投入はいまのまま75歳以上に対しての5割に限定するという前提であり、当然のことながら健保組合の負担がさらに数千億円増えるという結果になっています。どこまでわれわれに負担をかぶせようというのでしょうか。
 今回の肩代わり反対の闘いは、いまの国会情勢では、法案を修正し廃案にさせるのは確かに容易ではないと思います。ただわれわれがこの段階で毅然とした、強い抗議をすることで「健保組合にこれ以上の負担をさせるのは無理だ」という世論を喚起することが何より必要だと思います。さもないと、今回の試算にみられるように、果てしない財政調整という渦に巻き込まれて、いずれ一元化・一本化に追いこまれることになりかねません。
 全健保組合の強い意志を示すために、各組合会の反対決議をいまの政権にぶつけようではありませんか。すでに決議をされた組合もありますが、まだのところはどうかよろしくお願いします。
 第二点は、診療報酬の改定にかかわる点です。健保連としては「この深刻なデフレ下で診療報酬を上げる環境にはない」と反対したにもかかわらず、残念ながら10年ぶりにネットプラス改定となりました。いま、医療費は2007年に34兆円だったのが、年に1兆円ずつ増えて、今年は37兆円にも達していると推定されます。今回のプラス改定は、さらにこれに拍車をかけることになります。本気で総医療費を適正化し抑制することが、まさに必要になっています。
 そのためには二つのことが重要だと思います。
 一つは、医療の「見える化」をさらに徹底して進めることです。実際には必要のない検査や投薬が、医療費を押し上げていることは間違いありません。その意味で今回、医療費の明細書を無料で患者に発行することが決まったことは、高く評価できます。明細書があれば、実際に行われていない診療行為や検査等が入っていないか患者自身の目で確かめることができ、医者任せ医療からの脱却にも繋がることでしょう。やはり「見える化」の決め手はIT化だと思います。まずレセプトのオンライン化の完全実施を一日も早く実現することです。最近、政府が社会保障番号を含む国民共通番号の早期制定に意欲を示していることは評価できます。
 二つ目は、われわれ支払側の意識向上だと思います。「特定健診・特定保健指導」の仕組みは発足から2年になりますが、立ち上がりの混乱はあったとはいえ、皆さんのご尽力により少しずつ軌道に乗りつつあり、健康意識の向上に役立っていることは喜ばしいことです。
 医療費高騰の主因は老人医療費です。高齢者の医療費が若年層に比べて上がるのはどの国も同じですが、日本は他の先進国が2倍程度なのに対して、4倍にもなっています。医療に関して、日本はかつての老人医療無料化政策の悪しき伝統で老人をスポイルしてきたのではないでしょうか。高齢者は、なるべく若者の世話にならない、迷惑をかけないという意識を持つことが大切ではないでしょうか。
 ユダヤの古いことわざに「明日死ぬかもしれないが、今日一本のオレンジの木を植えよう」という言葉があります。次の世代に極力「つけ」を回さないという「オレンジの木」を植えなければならないと思うのです。
 「医療の見える化」「支払側の意識向上」、いずれもわれわれ保険者の重要な役割であり機能です。われわれ健保組合が存在意義を示すことのできる最も相応しい仕事です。ぜひ力をあわせて取り組もうではありませんか。



「肩代わり案」 断固阻止

22年度事業計画と予算決まる


 健保連大阪連合会は3月24日、ホテルモントレ大阪で総会を開き、平成22年度の事業計画と収入支出予算を決定した。

※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。


 ●健康保険組合をめぐる情勢
 

 昨年9月に新政権が誕生して早や6カ月が経過しようとしている。この間政治・経済など社会全体が大きく変化してきているが、とりわけ、少子高齢化が急速に進むなかで、われわれに関係する医療・社会保障政策が、どのような方向に進んでいくのかを注視しながら、適切な対応を考えていかねばならない。
 さて、健保組合の財政状況は、経済・雇用状況が引き続き低迷している影響で、保険料収入が著しく減少し、また、高齢者医療への支援金・納付金が大幅な負担増となるなど、収支両面にわたり、極めて厳しい状況に直面している。健保組合全体で、平成20年度では3、060億円の赤字となり、21年度予算では6、150億円もの巨額な赤字を見込んでいるが、これがさらに悪化することが危惧されている。
 このような財政的危機を迎えているなかで、政府は、協会けんぽの財政対策の一つとして、高齢者医療のための国庫補助財源の一部を健保組合等に肩代わりさせるという不合理な負担転嫁の法案を国会に提出した。健保連では、会長声明、厚生労働大臣等への要請、意見広告、マスコミ対応など反対運動を展開しており、大阪でも2月12日に理事組合を中心に、肩代わり反対のビラを大阪市内8カ所で配布し、多くの人に訴えた。これからも断固反対の決意をもって活動を続けていく。
 また、肩代わり法案は、厚生労働大臣が主宰する「高齢者医療制度改革会議」で高齢者の医療費をどのように分担して負担していくかなど、本格的な論議が始まっているなかでの提出であり、断じて許容できない。
 高齢者医療制度は、夏には中間とりまとめを行い、年末には最終報告をまとめ、再構築を図ることになっている。われわれは、従来から基本的な考え方として主張している「65歳以上を対象とする前期・後期の区分のない高齢者医療制度に、5割を目途に公費を投入する」ことの必要性を強く主張していく。また、国民全体で公平に高齢社会を支えていくなかで、その財源を安定的に確保していくための税の論議も極めて重要であり、将来とも持続可能な制度にしていかなければならないと考えている。長年にわたり、わが国の皆保険制度の中核を担い、自主・自立を旨として運営してきた健保組合が、さらに意欲的に運営努力を積み重ねていけるような制度の改革が必要である。
 以上の問題に加えて、10年ぶりに診療報酬がプラス改定される。中医協の答申には、明細書の無料発行や救急、産科、小児、外科等の充実など、評価できる内容も多く盛り込まれたが、高齢化の進むなか今後も医療費の増大は避けられず、引き続き医療費の適正化に努めていくことが重要である。
 大阪連合会では、各健保組合、各地区会はじめ、理事会、各委員会等において、常に問題点を共有しながら、真摯な議論を重ね、自主・自立の運営を図れる組合方式のもと、保険者機能を効果的に発揮していくことができ、安定した事業運営ができる医療保険制度の実現へ一層の努力を続けていくこととしたい。


 ●総会の経過
 

 総会開会に先立って、近畿厚生局 中内保険課長からあいさつがあった。
 総会では加藤会長が議長となり、総会の議事録署名者に、鴻池健保組合、大阪工作機械健保組合を指名、議案の審議に入った。

 議案第1号
  平成22年度事業計画(案)
 議案第2号
  平成22年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 

平成22年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること

   以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 

平成21年度被用者保険運営円滑化補助金事業会計収入支出予算および同説明(案)
 上記のとおり報告、承認された。

 

 以上のとおり、全議案の審議が終了した後、来賓として出席された健保連本部の池上秀樹理事、渡辺金次郎総務部専任部長から国会等の状況および高齢者医療制度等医療制度改革関連等について中央情勢報告があった。
 また、健保連大阪中央病院の大橋秀一院長、岩渕勝紀事務局長から病院と健康管理センターの現状報告があった。
 なお、衆参21人の国会議員の皆さまから、健保連の活動に対する激励のメッセージを、別掲のとおりいただいた。

 
総会にメッセージを寄せられた国会議員
   平野博文 衆・民主 大阪11区  
   
内閣官房長官
 
   樽床伸二 衆・民主 大阪12区  
   
民主党大阪府連代表
 
   吉田 治 衆・民主 大阪4区  
   
民主党副幹事長
 
   藤村 修 衆・民主 大阪7区  
   
厚生労働委員長
 
   長尾 敬 衆・民主 大阪14区  
   
厚生労働委員
 
   樋口俊一 衆・民主 比例近畿  
   
厚生労働委員
 
   松浪健太 衆・自民 比例近畿  
   
厚生労働委員
 
   梅村 聡 参・民主 大阪府  
   
厚生労働委員
 
   尾立源幸 参・民主 大阪府  
   熊田篤嗣 衆・民主 大阪1区  
   萩原 仁 衆・民主 大阪2区  
   中島正純 衆・民主 大阪3区  
   稲見哲男 衆・民主 大阪5区  
   村上史好 衆・民主 大阪6区  
   中野寛成 衆・民主 大阪8区  
   大谷信盛 衆・民主 大阪9区  
   大谷 啓 衆・民主 大阪15区  
   森山浩行 衆・民主 大阪16区  
   長安 豊 衆・民主 大阪19区  
   熊谷貞俊 衆・民主 比例近畿  
   松岡広隆 衆・民主 比例近畿  
 ○当日の出席状況
出 席
170組合
 
委任状
27組合
 
 ○来 賓
近畿厚生局健康福祉部
  保険課長 中内  明氏
健保連本部    
  理事 池上 秀樹氏
総務部専任部長 渡辺金次郎氏

事 業 計 画
 
基本方針〕
(1)重点事業活動
   健保連本部との連携を一層密にして、下記事項について取り組む。
 

@健保連本部と相呼応しながら、理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A政党・国会議員への要請活動は、健保連の主張を国政の場に反映させるため、積極的に推進する。
B行政機関とは、健保組合の円滑な運営のため、密接な連携を保つ。
C「協会けんぽ」とは、情報交換を行いながら協調関係を保っていく。
D経営者団体および労働団体との連携や、医師会等医療関係団体との意見交換を通じて相互理解を深める。
E「かけはし」「ホームページ」などの広報活動を通じて、健保連の考え方の周知を図り、理解度を高める。
F大阪府保険者協議会では、健保組合の意向を踏まえて、医療費の適正化や有効な保健事業に取り組む。
G国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
H「けんぽれん病院情報『ぽすぴたる!』」への登録促進について、引き続き積極的に取り組む。
I健保連地域懇談会では、大阪連合会の意見を反映させるとともに、近畿地区各連合会とは密接な連携を図る。
J健保連大阪中央病院および健康管理センターの利用促進を支援する。
Kその他、時宜に応じた諸対策を実施する。

(2)組織活動の継続強化
 

 大阪連合会の意思決定および情報連絡等が円滑に推進できるように、理事会等を開催する。

 

@理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催して対策を協議する。
B地区会を中心とした諸活動の充実を図る。

(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、次の活動を実施する。

@会員組合に提供する情報の充実を図る。
A組合予算編成および組合事務に関し、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B組合予算編成事務説明会を開催する。
C永年勤続者表彰伝達式を挙行する。
D会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
E会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト、特定健診・特定保健指導等の相談を実施する。

事業活動〕  
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行

@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療保険制度等改革関連(国庫負担の肩代わり阻止、高齢者医療制度の再構築等)。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と事業運営。
・政党・国会議員への要請活動。
・健保連大阪中央病院および健康管理センターの利用促進。

(2)広報活動の強化

@会員組合の事業活動の推進に役立つよう、大阪連合会ホームページを充実強化する。
A会員組合が行う広報活動を支援するため広報研究会を開催する。

(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張の浸透を図る。

・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)
・経営者団体・労働団体および医療関係団体
・その他、必要な関係者


2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上

@事務長研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・徴収・庶務会計)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会を開催する。
D健保事務相談を実施する。

(2)組合業務の改善・合理化の推進
    パソコン研修会を開催する。

3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化

@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。

(2)支払基金との連絡・調整の緊密化

@事務連絡協議会を開催する。
A審査委員との意見交換会を開催する。

(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用

@関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
Aレセプトおよび特定健診・特定保健指導データによる、医療費統計・分析の活用を図る。
B再審査査定事例を収集し、その活用を図る。
C後発医薬品の使用促進を図る。

(4)レセプト点検等に関する研修会の実施

@診療報酬改定に関する説明会を開催する。
Aレセプト確認事務に関する研修会を開催する。
B柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費に関する研修会を開催する。
C求償事務に関する研修会を開催する。

(5)医療対策室の活動強化

レセプト・保険給付相談を実施する。


4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施

メタボリックシンドロームなど生活習慣病の予防と対策、メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。

(2)保健師活動の実施

@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。
C健保連大阪中央病院の健康管理事業との連携を図る。

(3)大阪府保険者協議会との連携

保健活動部会との連携を図る。

(4)感染症対策
    エイズ、新型インフルエンザ等感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設の共同利用の契約
・プール利用券の斡旋
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣に運動を取り入れるためのキャンペーンを実施する。
A健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。

5.総合組合の運営助成
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
   

@総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
A特定健診・特定保健指導の実施上の課題を検討する。
BIT化による組合業務推進について検討する。
C協会けんぽとの比較等について検討する。


平成22年度 健保連大阪連合会収入支出予算概要

(単位 千円)