広報誌「かけはし」
 
■2010年3月 No.462
時評

長期的展望に立った財源確保を!!

 新年度の各健保組合の予算は、経済不況により、被保険者数・報酬月額の減少、さらに賞与額の落ち込みが激しく、多くの組合で積立金を取り崩すか、保険料率を引き上げるか、の対応を迫られたのではないだろうか。
 さて、昨年12月に厚労省から突然、「協会けんぽ」への後期高齢者支援金の国庫補助の肩代わり案が出された。これについては、健保連から反対声明として、@高齢者医療の問題はじっくり議論して決めるべき、A国庫補助を「肩代わり」させるのは国の責任放棄、B協会けんぽの国庫補助拡充は全額国費で賄うべき、との3点の考え方が示されており、苦しい財政状況に追い込まれている健保組合にとっては到底受け入れできるものではない。
 一昨年、今回の法案と同様な内容で肩代わり案が出されたが、財界や労働組合などの猛反対で廃案となった経緯がある。にもかかわらず、今回の肩代わり案はそれを全く無視するもので、疑問に思わざるを得ない。
 一方で最近マスコミにとり上げられた国保組合への国庫補助問題がある。
 国保組合への国庫補助率は、医療費の55%が上限とされている。それ以外に特別な事情を考慮した特別調整補助金がある。それを上積みすると、補助率が上限の55%を超える国保組合は、2007年度で165組合中19組合にのぼる。このうち、補助率が最も大きかったのは、京都の国保組合で実に70.6%という。
 特別調整補助金は、ほとんどの国保組合に配分され、2008年度の総額は229億円に達する。
 国は財政状況が厳しい折、これらの補助金により一般国保被保険者より保険料負担や保険給付の面で優遇されている国保組合には、即刻補助金を見直すべきである。ところが、2010年度予算では「いきなり変更すると国保組合の保険料が跳ね上がるなど影響が大きい」との理由で見直しは見送るとしている。
 国の対応は、以上のように見直すべき補助金を残し、過去の経緯と基本的な考え方から行うべきでない肩代わり案を強行するという大きな矛盾を抱えたものとなっている。
 国の財政赤字が膨らむなかで、少子高齢社会の進展は急速である。少子化対策や高齢化にともなう医療費の自然増等で、2011年度の社会保障関係費の追加財源の必要額は6兆円ともいわれている。国は前述した理解に苦しむ対応を即刻改め、無駄の排除を行う一方、長期的展望に立った財源確保に向け、努力されるよう切に望むものである。
  (S・Y)