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支援金の拠出変更は待てないのか

− 新高齢者医療制度まで − |
高齢者医療制度改革会議の初会合が昨年11月30日に厚生労働省で開催され、長妻厚労大臣は冒頭挨拶で「国民の信頼を高めるためにも、高齢者医療制度を持続可能なものにすることは必要不可欠なことである。本会議では4年を目途に新しい制度に移行することを目指して、さまざまな視点で議論をしてもらいたい」と述べた。そのうえで検討にあたっての基本的な考え方として六項目を示した。そのなかに「市町村国保などの負担増に十分配慮する」との項目があったが、これは「…に健保組合が十分配慮する」とのいい間違いだったのではないか。
というのは会合の数日後(12月4日)の社会保障審議会医療保険部会に「協会けんぽ」による後期高齢者支援金の負担を来年度から健保組合と共済組合に肩代わりさせることを厚生労働省が提案したのである。
この提案では各保険者の後期高齢者支援金を加入者数割から総報酬割に変更することで、「協会けんぽ」で2470億円減、健保組合は1430億円増、共済組合は1040億円増になると試算されていた。しかし、12月23日の予算編成関係閣僚会議で新高齢者医療制度ができるまでの特例措置として、当初案の約3分の1の負担(22年度は7月施行で健保組合は330億円増、共済組合は230億円増)となった。これは、われわれの強い反対の姿勢に配慮したものだったのか。
確かに健保連の意見広告はインパクトがあったが、一方で政治手法として大きく出しての落としどころだったのではないかとの疑念も残る。大岡越前の裁きではないが、三方一両損であれば、あまりにも稚拙な話である。
また、総報酬割負担も3分の1になっているが、本来、総報酬割への変更は、加入者数割では財政力が弱い保険者は負担が相対的に重いので、できる限り実質的な負担能力に応じた費用負担を求める観点からの一案であり、新高齢者医療制度構築の議論のなかにあるべき問題と思う。これでは「協会けんぽ」救済のための総報酬割ではないかといわれても、しかたないのではないか。
厚生労働省は、健保組合もまさに存亡の危機にある現状をどうみているのか。「お年寄りが苦しんでいるから、若者が助けなさい」との図式であろうが、若者(健保組合)も同様に苦しんでいるのである。
国もマスコミも、健保組合=裕福な大企業、協会けんぽ=中小零細企業として捉えているが、そうではない。われわれ健保組合が知恵を出し、汗を流して努力している実態を広く認識してもらうことが必要であろう。
国民皆保険制度のもとで医療を受ける権利は平等でなければならないが、権利の裏には義務もあり、その義務を果たすことができない者については、国が支援すべきであろう。
健保組合は、いまでも多大な支援金負担で苦しんでいる。拙速に結論を出す前に健保組合、共済組合も交えて議論を重ねるべきであったのではないか。せめて、新しい高齢者医療制度が決定するまでは国が財政支援措置をとることをいまからでもお願いしたい。 |
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(K・N) |
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