広報誌「かけはし」

■2010年1月 No.460
 
 
内臓脂肪を減らすコツ?

〜 メタボを防ぐグッド・ダイエット 〜

 12月2日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。大阪大学大学院 医学系研究科 准教授 前田和久氏が「内臓脂肪を減らすコツ?〜メタボを防ぐグッド・ダイエット〜」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
 

 

前田 和久氏

 簡単に説明すると、メタボリックシンドロームのメカニズムとは、過栄養や運動不足により腹部に内臓脂肪がたまり、危険因子、高脂血症や高血圧、糖尿病により心血管疾患をきたすというものです。

◆脂肪組織の働き

 私どもは、ヒトゲノムプロジェクト研究において腹部の脂肪について、どれだけヒトの体に悪影響を及ぼすのかを研究しました。脂肪組織の遺伝子解析を研究した結果、脂肪組織からは、たくさんの遺伝子が分泌されているということがわかりました。
 分泌された遺伝子が脳に働き食欲をコントロールしたり、筋肉に働きインスリン抵抗性を高めたり、血管に働き動脈硬化を引き起こすなど、あらゆる作用を及ぼします。
 こういった脂肪組織から分泌される多くの遺伝子のなかに、アディポネクチン遺伝子と呼ばれるものがあります。

◆アディポネクチン
 大きな特徴が3つあり、1つ目が最大の特徴として、体にとって非常にメリットのある、有益な遺伝子であるということです。2つ目が、脂肪組織だけに存在するということです。ヒトの遺伝子は3万個あるということがわかっており、現在、脂肪組織にだけ存在している遺伝子は4つしか発見されていません。
 現時点で、アディポネクチンに関する論文は4、000件以上報告されていますが、この遺伝子が筋肉や肝臓に働くと糖尿病を改善する、血管壁に働くと血圧を改善する、血管のなかに働くと動脈硬化を防ぐ、最近では、がん細胞もやっつけるという報告もあります。
 ただ、3つ目の特徴として、弱点をもつ遺伝子なのです。その弱点とは、脂肪組織の特に内臓脂肪が増えると、アディポネクチンは減少してしまうということです。過栄養や運動不足でこの弱点が現れ、糖尿病などから心血管疾患の発症につながってしまいます。

◆食事内容の重要性
 摂取カロリーが消費カロリーを上回れば太り、その逆なら痩せる、これだけが太る痩せるを決定します。食べて痩せるという食べ物はありません。カロリーはカロリーなのです。
 では、三大栄養素のなかの炭水化物に関して説明すると、消化吸収の良い白米などは、消化吸収の悪い玄米などに比べ、糖尿病や心筋梗塞を発症しやすくなるということが、国際糖尿病連盟の食事指導のガイドラインに示されています。
 また、アルコールについても、少量を摂取する人の方が心臓の病気を発症させにくいという報告もあります。ほかに、脂肪に関しては、オリーブオイルをはじめとした一価不飽和脂肪、魚類に含まれる多価不飽和脂肪も心臓の病気予防に効果があることがわかっています。ただ、脂肪のなかには超悪玉といわれる人工的に作られたトランス脂肪というものがあり、スプーン1杯で心臓の病気発症リスクが2倍になるということがわかっており、注意が必要です。政権交代した新政府のもとでトランス脂肪に対する積極的規制が期待されます。
 メタボリックシンドロームに対する初期治療介入に効果的なのは、@適度なカロリー制限、A適度な身体活動量の増加、B食事内容の変更、があげられます。
 エビデンスに基づいたグッド・ダイエットを摂取することにより、アディポネクチンを増やすことが、メタボリックシンドロームを防ぐためには重要だと思います。


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