広報誌「かけはし」
 
■2010年1月 No.460



 厚生労働省は昨年暮れ、後期高齢者医療制度に対する各医療保険者の支援金の算定方法を変更する案を社会保障審議会医療保険部会に提示した。現行の加入者割から総報酬割に改めるもので、同案によると健保組合全体で年間1400億円の負担増となる。このため、健保連では同案に対する全面阻止の活動を展開している。

 厚生労働省の案は、後期高齢者医療制度に対する各医療保険者の支援金の算定方法を現行の加入者割から総報酬割に改め、被用者保険間で財政調整したうえで支援金の支出に充てるもの。この案のような変更は本来、高齢者医療制度の根幹にかかわる重要事項のため、長妻厚労相が昨年11月末に発足させた高齢者医療制度改革会議などで深く検討されるのが本筋だが、社会保障審議会医療保険部会に突然提示された。
 医療保険者の赤字基調は協会けんぽも例にもれず、今年度は4600億円の赤字、年度末には3100億円の準備金不足が見込まれている。収支バランスをとるためには、現在82‰の保険料率を来年度95‰にする必要があるといわれている。一方、協会けんぽの保険給付費や高齢者医療制度への拠出金には、健保組合にない定率の国庫負担がついてまわる。保険料率を引き上げれば、連動して国庫補助の金額もはねあがる。国庫補助の大幅な増額については、昨年の国の来年度予算編成過程で難色が示された。
 このように、同案浮上の発端は、苦しい協会けんぽの財政対策とそれに対する国庫補助の問題。健保組合とは直接関係がなく、高齢者医療制度改革とむりやりセットさせた“国庫負担の肩代わり案”にすぎない。
 2年前に、当時の政管健保への年間1000億円もの“財政支援法案”が国会に提出され、われわれ健保組合・健保連をはじめとした反対で廃案に持ち込んだ経緯がある。しかし、その当時より健保組合の財政状況は極端に悪化しており、今年度予算での健保組合全体の経常赤字額は6150億円。これ以上、健保組合の保険料からの資金を他制度へ拠出できる環境では全くない。(図1)
 この問題に対して昨年の12月15日、日本経団連、連合、健保連の三団体は、国の責任で協会けんぽの国庫補助の拡充を図ること、高齢者医療制度等の医療制度改革については十分な議論と検討を行うべき、と長妻厚労相あてに共同で要請した。
 また、健保連は12月17日に、朝日、読売、日経、毎日、産経、東京の6紙朝刊に「一千四百億円もの国庫負担の肩代わり!財政赤字六千百五十億円の健保組合は耐えられない。」と題する1ページ全面をつかった意見広告を急きょ掲載した。さらに、健保連本部、都道府県連合会、健保組合あげて関係各方面に肩代わり案断固阻止の活動を展開している。

(図1)