健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
昨年一番のニュースは、歴史的な政権交代といわれる民主党政権の誕生です。国民の期待を背負って生まれた民主党政権ですが、残念ながら、いまのところ私どもの関係する医療行政の分野ではそのやり方に深い失望を抱かざるを得ません。この深刻なデフレ下で診療報酬の引き上げを決めたのもそうですし、日本の医療現場の実態を明らかにする最も有効な武器とみられていた、レセプトのオンライン化の完全実施を大幅に遅らせたこともそうです。
私どもが最も納得できないのは、二年前の健保組合による国費の肩代わり案をまたもや蒸し返してきたことです。
ご承知のように、今回の案は協会けんぽが財政難であることから健保組合に後期高齢者医療制度の支援金を一部肩代わりさせることで、協会けんぽへの国庫負担を減らそうということです。しかもその負担は人頭割ではなく総報酬割でやろうということです。
まず第一に、協会けんぽの財政難の問題は、政府がその解決の責任を果たすべきです。協会けんぽへの国の助成は16.4%から20%までと決められており、まず20%限度いっぱいまでの助成を行うべきです。また、協会けんぽはいまや独立した公法人としての保険者であって、真剣に自助努力を進めるべきです。保険者でありながら、保険料の徴収は旧社会保険庁が行っているといういびつな構造になっていますが、おそらく国保と同様に保険料の滞納がかなり発生していると思われます。まずこの点を明らかにして改善するべきです。
第二に、後期高齢者医療制度への支援金に、人頭割ではなく総報酬割という考え方を持ち出してきたことです。支援金の頭割り負担は、今後若い世代が減り高齢者が増える中で、高齢者の負担が徐々に増えていくという制度であり、高齢者にもそれなりの負担を負っていただくという考えによるものです。総報酬割という考えはこの制度の根幹を変えるものであり、いま始まった高齢者医療制度の検討会の場でまず議論されるべきであって、拙速に実施するべきではありません。
第三は、なにより私どもが財政的に極めて困難な状況に置かれていることを無視していることです。ご承知のように、平成21年度予算で90%の健保組合が赤字です。しかも不況の深刻化によりさらに状況は悪化しつつあります。昨年秋の健保組合全国大会でも、政府に緊急支援を強く要請したばかりであり、私どもの実情をかえりみない案に強く抗議し反対するものです。
聞くところによりますと、私どもの強い姿勢を見て、年末に長妻厚生労働大臣が健保連本部に来訪され、当初の1400億円を3分の1に減額する案を持って来られたとのことです。しかし、これは金額の多寡の問題ではありません。このような小商人のようなやり方にも改めて深い憤りを感じざるを得ません。そもそも健保組合は自主独立の組織です。組合員からいただく保険料は本来組合員の安全と健康のためのものです。国が財政難を理由に、一方的に私どものふところに手を突っ込んでくることは到底容認できるものではありません。
残念ながら、この案は政府の予算編成の基本案に取り込まれました。今後、通常国会の場に議論が移るなかで、徹底的に反対していきたいと思いますのでどうかよろしくお願い申し上げます。
おそらく極めて困難な戦いになると思いますが、いまこそ一致団結してとことん戦おうではありませんか。
厳しいデフレ不況下で世相が荒れています。凶悪な事件や詐欺事件が頻発しています。ただ私は時折海外に出てみて、まだまだ日本は、諸外国に比べてはるかに安全で住みやすい国であるとの感を新たにします。その理由の一つは、諸先輩が長年にわたって築き上げてきた社会保障インフラがまだ機能しているからです。それを支えている最も重要な制度の一つが国民皆医療保険制度であることは言うまでもありません。
今回の政府の理不尽な案に対する戦いは、この制度を守る戦いでもあると思います。
最後に、皆様のご健勝を祈念し簡単ですが新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。 |