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平成22年度の次期診療報酬改定の審議が、中医協(中央社会保険医療協議会)で本格化している。検討が進めば、来年4月から改定が実施される。
診療報酬改定のプロセスは、社会保障審議会の医療部会、および医療保険部会が改定の基本方針をまとめ、内閣が診療報酬総枠の改定率を決定する。それを受けて中医協が個別の保険医療行為、保険薬価などの点数に反映させるための資源配分の検討を行うという流れになっている。中医協での審議内容は、医療の実情検討から医療機関と保険者双方の財政状況把握に至るまで幅が広い。
平成20年4月の前回改定では、平均0・82%の引き下げが行われた。その内訳は、診療報酬本体が0・38%引き上げ(医科・歯科0・42%、調剤0・17%)、薬価・医療材料は1・2%引き下げであった。
ところで、医療保険医療費の伸び率を厚労省の調査でみると、前回の診療報酬改定が満年度におよんだ平成20年度と、改定がなかった前年度との比較では、医療費は1・9%の伸びとなっている。改定率との間に差があるが、これは高齢化や医療技術の高度化などの影響によるもので、インフルエンザの流行も影響をあたえる。最近の医療費の伸びの状況をみると、平成21年4月〜6月と前年同期との比較では、3・9%増と高くなっている。
つまり、診療報酬の改定がなくても医療費は増え、仮に引き上げが行われた場合、医療費は積み増しされることになり、財政が逼迫する保険者にとって重しとなる。
したがって、われわれからは、限りある医療費財源が効率的に活用される診療報酬制度の設計となるよう望みたい。そのために医療費の適正化を進める一方、医療体制のぜい弱な部分には手立てのための資源が配分されるようなメリハリのある改定とするべきである。
前回の改定では、産科、小児科医療への重点評価、病院勤務医の業務負担への改善対策などが盛り込まれたが、救急医療を含めて今回も継続した対応策が求められる。また、前回、患者からみてわかりやすい医療を実現するという視点から、希望する患者に対する医療費明細書発行の一部義務化や、医療費効率化の視点から、後発医薬品の使用促進策が図られた。これらの施策については改定結果の検証にもとづき、もう一歩の踏み込みが望まれる。
今回の改定へ積み残されたもうひとつの課題としては、病院と診療所での再診料の点数格差問題がある。現在、200床未満の病院60点、診療所71点となっているが、「点数格差の是正を図るべき」とする支払側と、「引き上げが必要」とする診療側の考えに隔たりがある。この点については、国民医療の視点からエビデンスをもって見極めてほしい。 |
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(T・M) |
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