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7月30日、薬業年金会館で心の健康講座を開催。大阪市立大学大学院 医学研究科 神経精神医学 教授 切池信夫氏が「ストレスと摂食障害」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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切池信夫氏 |
働く女性の増加と相まって、女性のあいだでストレスによる心身症が増加しています。その背景として、若い女性では職業の選択、結婚にせよこれを決定する年齢が高くなり、ライフスタイルの選択肢が多様化し、より主体的に人生を選択できる(すなわち自己実現に向けて)方向で社会が動いてきています。
しかし、現実的には男女間の性役割分担は、思ったほど解消しておらず、伝統的な性役割分担が存在するなかで主体的に人生を選択、自己実現に向けて生きていかなければなりません。
さらに既婚女性では、仕事と家庭の両立の悩みなど、極めてストレスに満ちた状況に生きています。そして現代の日本では食べ物があり余り、飽食の時代といわれています。このような状況下で、グルメやストレス解消のために食べすぎたりして、生活習慣病を引き起こす肥満が増加し、他方では、肥満を防ぐためにダイエットしたり、やせたいという願望から拒食になったりして、神経性食思不振症や神経性過食症などの摂食障害の患者が増加しています。 |
神経性食思不振症は、身体像の障害、強いやせ願望や肥満恐怖などのため、不食や摂食制限、あるいは過食して嘔吐するため、著しいやせと種々の身体・精神症状を生じる一つの症候群です。
一方、神経性過食症は、自制困難な摂食の欲求を生じて、短時間に大量の食物を強迫的に摂取しては、そのあと嘔吐や下剤の乱用、翌日の摂食制限、不食などにより体重増加を防ぎ、体重は拒食症ほど減少せず、正常範囲内で変動し、過食後に無気力感、抑うつ気分、自己卑下をともなう一つの症候群です。
そこで本日は、まず神経性食思不振症や、神経性過食症などの摂食障害が、なぜ増加しているのかについて考え、次いで発症機序や臨床像、さらに診断と合併症について述べます。
さらに、働く女性と摂食障害について、女性労働者、現代女性を囲む情勢、女性の摂食障害例、摂食障害と職場ストレスの関係、既婚女性の摂食障害例について紹介します。 |
[講演では、実際に先生が担当された方の事例の概要や、図表による調査結果の説明などがありました。また、講演終了後には、参加者からの質問にも丁寧にお答えいただきました。] |
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