 |
支えられる命

─ 自殺予防 ─ |
6月4日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。大阪精神科診療所協会会長・渡辺クリニック院長 渡辺洋一郎氏が「支えられる命〜自殺予防〜」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
|
 |
|
渡辺洋一郎氏 |
生命的危険性の高い手段により自殺を図ったものの、幸い救命された者についての調査によると、うつ病、統合失調症および近縁疾患等、精神疾患の有する者が75%で、なかでもうつ病の割合が高い結果がでています。つまり、自殺は、精神疾患、とくにうつ病と強い関係があるといえます。
さらに、自殺の生涯危険率では、気分障害や統合失調症とならんでアルコール依存症の危険率が高く、これらの障害では精神科医と連携し、患者が適切な治療を受けられるようにすることが、自殺予防のために重要です。
また、自殺者の遺族による自殺率も高く、遺族への支援も必要です。 |
精神的、肉体的疲労が蓄積されていくうちに、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の働きに異常をきたし、さまざまな症状が出現する病気です。体質や性格、身体的因子、心理的因子も関与します。
主な症状は、身体的には睡眠障害、疲労感・倦怠感、頭痛など、精神的には意欲・興味の減退、仕事能率の低下、抑うつ気分などがあげられます。
「憂うつな気分」または「興味や楽しみを感じない状態」が、ほとんど終日、毎日、2週間以上続く場合は注意が必要です。
|
うつ病は、社会環境、労働環境、生活環境の急激な変化において、最もポピュラーに生じてくる病気で、対応を誤ると自殺に結び付きます。企業にとってはリスクマネジメントとして重要であり、従業員の生死にかかわる問題であると同時に、企業の存亡に関わる課題でもあります。 |
現在、職場において精神科医療へのニーズが増大しています。職場のメンタルヘルスの充実のためには事業者のみならず、管理監督者の役割が大きく、職場状況の分析能力、部下を理解する能力、相談にのる能力、他者と連携する能力―コミュニケーション能力とメンタルヘルスの知識が求められています。相談を受けて、話を聞いた結果どのように対応するかが重要になってきます。 |
さし迫った状態に至っていないかのチェックがまず重要なので、どんな内容で相談にきたとしても、まず確認すべきことは「好きなことは楽しめるか、睡眠はとれているか」という質問です。この質問に「イエス」の場合は、そのまま話を聞きビジネスの問題として対応して良い(ビジネスモード)。しかし、「ノー」の場合には、うつ病をはじめとする病気のレベルに至っている可能性もあるので医療機関の受診を促す(メディカルモード)ことが大切です。
医療機関受診を勧めるに際しては、メンタルヘルス不全が必ずしもメンタル疾患とは限らず、身体疾患から生じることもあるので、まず産業医への相談を勧めましょう。対象者が受診を拒否する場合は、人事労務へ報告し、場合によっては安全配慮義務面からの対応を行います。
医療と職場との連携も重要です。連携のためには、主治医の立場と原則の認識、産業医の積極的参画、守秘義務の徹底(本人の同意、同席が大原則)を図った上で、人事・労務担当、産業医、主治医との連携を考えましょう。
メンタル不全従業員の休職・復職を決定するのは、主治医ではなく、事業者であるのですが、そのためには復職判定委員会の設置などシステムの整備が必要になることは忘れてはいけません。 |
|
 |