広報誌「かけはし」
 
■2009年6月 No.453
時評

領収書発行の義務化を

− 柔整療養費支給適正化に向けて −


 「肩こり、腰痛、保険適用」これらの文字が記載された看板やチラシがやけに目につく。
 柔道整復療養費の支給対象となるのは、骨折、脱臼、打撲および捻挫と挫傷であり、単なる肩こりや腰痛、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外であると施術のルールが明記されている。
 柔道整復師の施術を受けた場合の費用は療養費として支給されるが、この取り扱いは、他の療養費の「償還払い」と違い、「受領委任払い」により支給することとなっている。柔道整復師の施術に要した費用については、保険者と柔道整復師会の協定・契約に基づき、施術を受けた患者は、一部負担金に相当する額を柔道整復師に支払い、残りの費用は患者から受領の委任を受けた施術者が保険者に請求する。これにより、患者は保険医療機関に受診する場合と同様で、その施術を受けることができる。
 最近、一部の整骨院による悪質な不正請求の事案が相次いで報道されている。
 架空・水増し請求、無資格施術、名義貸し、負傷のねつ造などで、患者が保険者からの医療費通知を確認して発覚している。
 その背景には、柔道整復師の急増がある。平成20年度は10年前の5倍近い4、763人が国家試験に合格、養成校の数もこの10年で7倍、約100校に増えた。整骨院等の施術所は10年で4割強増えて3万カ所を超えた。需要と供給のバランスが崩れている。
 不正請求が多いから保険適用から外すべきとの提案もある。
 しかし、平成19年10月2日付で、辻泰弘参議院議員から提出のあった「柔道整復師による療養費の不正請求問題に関する質問主意書」に対する政府・内閣答弁書において、厚労省は、受領委任払いの制度については患者のために今後とも必要な制度と考えている、と回答している。受領委任払いが必要であれば、せめて協定(契約)のルールを洗い直す必要がある。
 協定(契約)内容にかかる事項をみると、現行、領収書の発行については、「今後、柔整師が患者から一部負担金を徴収した際の領収書および施術明細書の交付について、より一層指導すること」となっているだけで、義務化されていない。すでに医療機関においては医療費の内容の分かる領収書の発行が義務付けられており、協定に「領収書を無償で交付しなければならない」ことを明示すべきである。患者は領収書を確認すれば、施術事実、施術料金等がチェックできる。さらに、医療費通知と突合すれば有効だ。
 また、「受取代理人」の欄については、当月の最後の施術の際に患者が1カ月分の施術内容を確認したうえで、署名を行い、申請書を作成することになっている。にもかかわらず患者がそのルールを知らないのをいいことに、月の初めに署名を受けるいわゆる“白紙委任”の問題や、柔整師による不正な署名・押印などの問題が起こっている。患者自身による署名の徹底を図ることも必要だ。
 柔道整復師の施術にかかる療養費支給適正化に向け、領収書発行の義務化の早期実現を望むところである。
  (Y・T)