広報誌「かけはし」
 
■2009年4月 No.451

財政調整・一元化を断固阻止

21年度事業計画と予算決まる


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 健保連大阪連合会は3月25日、ホテルモントレ大阪で総会を開き、平成21年度の事業計画と収入支出予算を決定した。

 

 昨年4月から実施された新たな高齢者医療制度は、健保組合にとって大幅な負担増加となり、20年度予算では9割の健保組合が経常収支赤字予算という、かつてない異常な事態となった。21年度も世界経済危機による景気の急速な悪化がもたらす保険料収入の減少や、制度改正に伴う納付金等の負担による財政悪化が見込まれ、健保組合の事業運営は極めて厳しい状況にある。
 このような状況のなか、健保連では、昨年11月の全国大会を「健保組合存亡の危機突破総決起大会」として、@前期高齢者医療制度に対する公費投入の実現 A制度間の財政調整・一元化構想の断固阻止 B税・財政改革による安定した社会保障財源の確保、の3項目を全健保組合の総意として決議した。
 とくに、財政調整・一元化については、健保連のこれまでの主張を集大成し、「医療保険は加入者の連帯感にもとづき、自主的・民主的な運営を重視した多元的な制度体系が望ましく、健保組合や皆保険体制の破綻につながる財政調整は行うべきでない」と結論づけ、母体企業はもとより広く国民に健保連の主張を訴えていくとともに、阻止活動を継続的に展開していくこととしている。
 ところで、一昨年8月に突如として浮上した政管健保への支援法案について健保連では、強い姿勢で抗議活動を行ったが、最終的に政府からの正式要請も踏まえて、20年度限りの支援措置として苦渋の選択をし、やむなく容認することとした。しかしながら、ねじれ国会での政治の混迷もあり結果として廃案となり、また21年度においてもこの支援措置は、政府予算案に盛り込まれなかった。このような状況に追い込んだのは、健保連挙げての国会議員等への強い要請行動や健保組合全国大会における全会一致の決議など健保連・健保組合が一体となって取り組んだ諸活動の努力が実ったものである。
 医療保険制度における財源の確保は、国民皆保険体制の維持継続に欠かせないもので、健保組合に負担を強いた支援法案のような一時凌ぎではなく、恒久的な手立てをしていくべきであり、税問題も含めて早急に議論を深め方向を明確にしていく必要がある。
 大阪連合会では、各健保組合、各地区会はじめ、理事会、各委員会等において、常に問題点を共有しながら、真摯な議論を重ね、自主・自律運営が図れる組合方式のもと、保険者機能を効果的に発揮していくことができ、安定した事業運営ができる医療保険制度の実現へいっそうの努力を続けていくこととしたい。


  ●総会の経過
 

 加藤会長が議長となり、総会の議事録署名者に、大阪婦人子供既製服健保組合、ラウンドワン健保組合を指名、議案の審議に入った。
 なお、総会開会に先立って、近畿厚生局中内保険課長からあいさつがあった。

   
 議案第1号
  平成21年度事業計画(案)
 議案第2号
  平成21年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 

平成21年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること

  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 

平成20年度特別保健福祉事業助成金事業会計収入支出予算および同説明。
 本部総会において全国一括決議を受けている旨報告、承認された。

 
 

 以上のとおり、全議案の審議が終了した後、来賓として出席された健保連本部平井克彦会長のあいさつがあり、池上秀樹理事から国会等の状況および高齢者医療制度等医療制度改革関連について中央情勢報告があった。
 また、健保連大阪中央病院大橋秀一院長よりあいさつがあり、岩渕勝紀事務局長から「大阪中央病院健康管理センター」の紹介があった。

   
 ○当日の出席状況
  出 席 171組合  
  委任状 25組合  
 ○来 賓
  近畿厚生局健康福祉部
    保険課長

中内  明氏

  健保連本部    
    会長

平井 克彦氏

  理事

池上 秀樹氏

 
 加藤会長あいさつ (要旨)

 深刻化した不況の情勢は健保組合の事業運営に大きな影響を与えています。21年度は20年度以上に厳しい予算編成を余儀なくされている健保組合が多いことと思います。新しい高齢者医療制度により、支援金、納付金等の負担が急増しましたが、これは21年度も継続しています。企業業績の悪化は保険料収入の減少につながることになり、今年度は本当に厳しい年となることでしょう。このなかで我々が力を合わせて取り組むべき課題を3つ挙げたいと思います。
 第一は、高齢者医療制度の見直しの議論に積極的に参加するべきです。舛添大臣直属の検討会や与党の検討グループで議論が進められてきましたが、いずれも新たな方向を提示するに至っていないようです。
 一方で、当初はマスコミが煽ったこともあり、とくに後期高齢者医療制度への批判が高まりましたが、これも最近は沈静化しているようです。我々は、今の新しい制度のベースの上に立って、75歳以上ではなく65歳以上を一本の制度として、後期だけではなく全体に公費を投入する、追加される公費は消費税、タバコ税等の新たな財源で手当する、という案をずっと主張してきました。最近の議論を見ていても、我々の主張が合理的で説得力があることに自信を持ってよいと思います。
 第二は、いまも根強くある、被用者保険の一元化の動きに徹底して反対することです。健保組合は国からの支援をほとんど受けていない、自主独立の組織です。組合員や事業主からいただいた保険料は、組合員の健康のために使われるのが本来の形です。同じ仕事仲間の組合員の健康維持という高いモチベーションがあることにより、保険者機能が発揮され、医療費適正化に寄与してきました。
 一部の識者が主張するように、都道府県単位の地域保険に一元化することになれば、いまでも保険料の半分近くが、支援金、納付金等に充てられているのが、ますます使途が分らないことになりかねません。
 健保連では昨年12月に財政調整・一元化阻止特別委員会の最終報告をまとめました。これは何よりの我々の指針となるものであり、ぜひ活用いただきたいと考えます。
 第三は、レセプトのオンライン化を成功させることです。レセプトのオンライン化は今回の医療改革のもう1つの目玉であり、平成23年度初めには実施することになっています。ところが、医師会は小規模診療所が実施不可能という理由で白紙撤回の要求をし始めました。医療データをITを使ってきちんと蓄積して、実際に使える形に整備して、医療プロセスの「見える化」を図ることは何よりの第一歩だと思います。
 年金記録問題が発端となって、社会保障カードの議論も始まっています。レセプトオンライン化の実現と合わせて、いわばこれらの医療の基礎インフラがきちんと整備されることを強く要求していく必要があります。
 アメリカではオバマ大統領が公約の1つに医療保険改革で、国民皆保険を実現することをあげています。アメリカでは、医療保険未加入の人が人口の15%、約4500万人いるといわれていますが、景気対策に膨大な資金を出さなくてはならず、巨額の金がかかる医療制度改革にはとても手が回らないと思います。
 その意味では先人の努力で積み上げられてきた、いまの日本の制度をなんとか維持していくことがいかに重要かを改めて痛感します。健保組合はその担い手です。困難な時期ですが、皆さんとともに、問題点を共有化し、力を合わせてその解決のために全力を挙げたいと考えております。
 最後に申し上げたいことは、旧政管健保への財政支援肩代わり法案は廃案になりました。現在も蒸し返そうという動きがありません。これは我々が組織を挙げて取り組んだ強い抗議行動の成果です。先ほど述べた諸課題を含めて、重要な医療制度改革はどれをとっても政治の場で決められます。
 今年は総選挙の年でもあります。
 我々は政治の場への発言をますます強める必要があります。そのための組織が健政連であり、その活動へのご協力をぜひお願いしたいのです。


事 業 計 画
 
基本方針〕
(1)総括
   健保連本部との連携をいっそう密にして、下記事項について取り組む。
 

@健保連本部と相呼応しながら、理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A政党・国会議員への要請活動は、健保連の主張を国政の場に反映させるため、積極的に推進する。
B行政機関とは、健保組合の円滑な運営のため、密接な連携を保つ。
C「協会けんぽ」とは、情報交換を行いながら協調関係を保っていく。
D経営者団体および労働団体との連携や、医師会等医療関係団体との意見交換を通じて相互理解を深める。
E「かけはし」「ホームページ」などの広報活動を通じて、健保連の考え方の浸透を図る。
F大阪府保険者協議会では、代表保険者として円滑な事業推進を図るとともに、健保組合の意向を踏まえて、医療費の適正化や有効な保健事業に取り組む。
G国保運営協議会では、被用者保険サイドの意向を反映させる取り組みを行う。
H「けんぽれん病院情報『ぽすぴたる!』」への登録促進について、引き続き積極的に取り組む。
I健保連地域懇談会では、大阪連合会の意見を反映させるとともに、近畿地区各連合会とは密接な連携を図る。
J健保連大阪中央病院および健康管理センターの利用促進を支援する。
Kその他、時宜に応じた諸対策を実施する。

(2)組織活動の継続強化
 

 大阪連合会の意思決定および情報連絡等が円滑に推進できるように、理事会等を開催する。

 

@理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催して対策を協議する。
B地区会を中心とした諸活動の充実を図る。
C新年互礼会(第44回)を開催する。

(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、下記活動を実施する。

@会員組合に提供する情報の充実を図る。
A組合予算編成および組合事務に関し、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B組合予算編成事務説明会を開催する。
C永年勤続者表彰伝達式を挙行する。
D会員組合の特定健診・特定保健指導の推進を支援する。
E会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト、特定健診・特定保健指導等の相談を実施する。

事業活動〕  
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行

@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療保険制度等改革関連(とくに前期高齢者医療制度への公費投入、財政調整・一元化構想の阻止)。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と事業運営。
・政党・国会議員への要請活動。
・健保連大阪中央病院および健康管理センターの利用促進。

(2)広報活動の強化

@会員組合が行う広報活動を支援するため広報研究会を開催する。
A大阪連合会ホームページを充実強化するとともに、会員組合との相互リンクを推進する。

(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張の浸透を図る。

・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)
・経営者団体・労働団体および医療関係団体
・その他、必要な関係者

 
2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上

@事務長研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・徴収・庶務会計)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会(特定健診・特定保健指導を含む)を開催する。
D健保事務相談を実施する。

(2)組合業務の改善・合理化の推進
    パソコン研修会を開催する。
 
3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化

@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。

(2)支払基金との連絡・調整の緊密化

@事務連絡協議会を開催する。
A審査委員との意見交換会を開催する。

(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用

@医療費の地域間格差の是正を推進する。
Aレセプト情報管理システムによる医療費統計・分析の活用を図る。
B再審査査定事例を収集し、その活用を図る。
C後発医薬品の使用促進を図る。

(4)レセプト点検等に関する研修会の実施

@レセプト確認事務に関する研修会を開催する。
A柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費に関する研修会を開催する。
B求償事務に関する研修会を開催する。

(5)医療対策室の活動強化

レセプト・保険給付相談を実施する 。

 
4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施

メタボリックシンドローム対策、メンタルヘルス等をテーマに健康セミナー、健康教室、心の健康講座を開催する 。

(2)保健師活動の実施

@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援するため、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。
C健保連大阪中央病院の健康管理事業との連携を図る。

(3)大阪府保険者協議会との連携

代表保険者としての円滑な事業の推進に努める。

(4)感染症対策
    エイズ等感染症に対する正しい知識の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設等の共同利用の契約
・プール利用券の斡旋
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣に運動を取り入れるためのキャンペーンを実施する。
A健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。
 
 
5.総合組合の運営助成
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
   

@総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を把握する。
A特定健診・特定保健指導の制度定着への課題を検討する。
BIT化による組合業務推進について検討する。
C健保組合の再編・統合について研究する。

 
6.近畿地区各連合会との連携
 諸事業の実施に際しては、必要に応じて近畿地区各連合会と連携を図り、活動を積極的に推進する。
 

平成21年度収入支出予算概要(単位 千円)