広報誌「かけはし」
 
■2009年4月 No.451
時評

「オンライン化」は時の要請

− 電子レセプトのメリット活かせ −


 支払基金が1年間に取り扱うレセプト(診療報酬明細書)の総件数は、平成19年度で8億6400万件。ひと昔前、支払基金が医療機関から受け取る年間数億件のレセプトは、すべて手計算、手書きによる紙での請求だった。
 30年ほど前からは、医療機関にレセコンが普及し始め請求事務の機械化が進んだ。しかし、近年までレセプトは「紙」が原本とされていたため、医療機関から審査・支払機関を経由して健保組合などの保険者に届くまでに次のような手順がとられ、現在も大きな流れになっている。
 @医療機関では、レセコンに蓄積している診療データから紙にアウトプットしてレセプトを作成、支払基金に送付する。
 A支払基金では、送られてきた紙レセプトのデータを独自のコンピュータに再度取り込み点検・審査した後、紙の原本を保険者へ送付する。
 B健保組合では、正当な診療費請求か確認するため健保組合のコンピュータに再々度取り込みチェックする。@ 〜 B により、同じデータを別のシステムに度々手間をかけて取り込んでいるが、この非効率性については、経済界を中心に「膨大な社会資本の流出」と指摘されていた。
 レセプトの電子化が提唱されたのは平成13年、政府のe-japan戦略からである。しかし、具体的には平成17年の医療制度改革大綱で“平成23年度からの原則完全オンライン化”が打ち出された。そして、翌年4月には省令でスケジュールが示されてから電子化の動きが急速に進んだ。
 支払基金がまとめた各年度末の医科電算レセプトの普及状況によると、平成16年に9・8%だったのが、17年14・6%、18年21・8%、19年34・1%。直近では今年1月末現在47・1%で、内訳は病院分が76・7%、診療所分が36・1%となっており、飛躍的な伸びを示している。昨年4月からの400床以上の病院のオンライン化実施が反映されているが、今月からは400床未満の病院でも始まった。来年4月からは診療所で開始される。
 一方、健保組合のレセプト受け取り体制はどうか。現在、支払基金からのオンラインによる受け取りはまだ少ないが、3分の2以上の健保組合が電子データをシステムで受け入れることができるようになった。これによりレセプト点検・分析業務の効率化がいっそう進み、併わせて紙レセプト保管のための広いスペースが不要、という波及効果を生んだ。
 スケジュールどおりだと、レセプト請求件数が月100件以下の小規模病院、診療所には、平成23年4月1日の予定期日よりさらに2年の範囲の猶予期間がある。だが最近オンライン化に反対、あるいは緩和策拡大を求める一部の意見が表面化している。
 しかし、国民経済的観点、わかりやすい医療を求める患者の視点、迅速性・正確性をめざすIT活用の時代の要請など、多面的にみてレセプトのオンライン化をスローダウンさせることはできない。
  (T・M)