■2009年2月 No.449
「社会保障カード」の実現に向けて
− 内容と日程の早期開示を望む −
医療の構造改革をITにより推し進め、効率的な医療を国民に提供することを掲げることも含めた政府のIT新改革戦略が平成18年1月19日にスタートした。このなかにはレセプトの完全オンライン化により医療保険事務のコストを大幅に削減することと、レセプト活用により予防医療等を推進し国民医療費を適正化すること、および個人が生涯を通じてICカードを利用して健康情報を活用できる基盤づくりをすることが目標とされている。
その後、ICカードの導入について議論がなされ「健康ITカード(仮称)」を導入することで基本構想が進んだ。しかし、年金記録漏れの不祥事が社会問題化し、信頼の回復のため、年金手帳や健康保険証および介護保険証としての役割を果たす「社会保障カード(仮称)」としての検討が新たに開始された。
このカードのメリットは、@健康保険証、年金手帳、介護保険証がひとつになることで利用者は1枚のカードで社会保障サービスを受けることができる。A事務面から見ても個人を3つの社会保障面から把握できるので資格取得等の管理が確実に行える。
さらに、医療分野に限ると、@保険者を異動してもカードの返却および再発行を必要とせず将来にわたり同じカードを使用できる。A医療機関で資格確認が即時に可能となり、医療費の過誤請求が大幅に減少する。B個人の健診結果等の健康情報も閲覧でき、レセプトのオンライン化とともに健康予防・増進に貢献できる。以上のように、このカードは医療費の適正化と事務コストの削減に多大な効果があると考えられる。
しかしながら、このカード実現に向けた問題も小さくない。@個人情報の保護、セキュリティ確保対策と仕組みづくり。A医療、年金、介護の各制度における各保険者が管理している加入者を特定するためのキーとなる情報の決定。たとえば、社会保障番号。Bカード発行・交付主体。Cカード導入・運営費用負担。これらの課題のなかでもとくにAの社会保障番号は、国民のコンセンサスを得る必要がある重要な項目である。
政府は社会保障カードを平成23年度を目途に導入を目指すと発表している。まもなく平成21年度が始まり、スタートまで2年を残すところとなり、この日程に合わせ医療保険者の40%近くが現行の健康保険証のカード化を行わずこのカードの実施を待っている。しかし、国民全員にこのICカードが行き渡るには発行能力の問題で数年かかるともいわれており、全体日程によっては保険者はどちらのカード化を実施するかの決断が必要となる。
画期的なこのカードシステムが、後期高齢者医療制度が国民に対する説明不足から大きなバッシングを受けた同じ轍を踏むことのないためにも、国民への十分な説明を早く行うべきである。それとともに、医療、年金、介護の仕組みおよびシステム全体も大きな変化を伴うので、われわれ医療保険者が実施時期と実施内容を正確に判断できるように全体のスケジュールと情報の開示を早急にお願いしたい。
(T・G)