新年明けましておめでとうございます。
皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
アメリカ発の金融危機は世界中に波及し、今や実体経済にも大きな影響が出始めています。
日本経済の柱となってきた自動車やデジタル家電が大きく揺らいでいることは深刻です。とくに、「オートクライシス」と呼ばれる自動車産業の不振は、この産業の裾野が広いだけに、雇用にも大きな影響を与え始めています。
今回の危機の発端は一昨年夏からくすぶり始めていたアメリカのサブプライムローンの焦げ付きであったわけですが、危機が激化したのは、実は昨年9月15日のリーマンブラザーズの破綻からです。その意味では世界同時不況といわれる今回の不況はまだ始まったばかりかもしれません。
社会保障はこのような時期にこそ必要なセーフティーネットであり、今年は社会保障に携わる私どもにとっては、真価を問われる年になるだろうと思います。
報酬が下がることで、保険料が減収になることも予想されますし、財政難で解散する健保組合が増加することも懸念されます。企業年金は運用環境がさらに悪化することが心配です。
新年にあたり身を引き締めて、国民の福祉を支える制度を守り、必要な改革を着実に進めていく覚悟を新たにしたいと考えます。
健康保険について昨年を振り返りますと、数少ないグッドニュースの一つは、旧政管健保への国庫負担の肩代わり法案が廃案になったことです。これは皆様とともに進めてきた反対運動の成果であり、皆様のご尽力に感謝したいと思います。
この廃案によって、実質的に2007年から、社会保障費を毎年2,200億円ずつ削減するという方針が方向転換を余儀なくされたことも、よかったと思います。
昨年10月には政管健保を引き継いで、協会けんぽが発足しました。単なる衣替えではなくて、発足以来、「保険者機能強化アクションプラン」を発表されるなど新たな観点で意欲的な活動を始めておられることを歓迎するとともに敬意を表したいと思います。
ご記憶のように、今回廃案になった肩代わり法案は、最初の目論みは、財政調整を通じて被用者保険を一元化する恒久的な仕組みをつくることでした。
今回は廃案になりましたが、今後も形を変えて、繰り返しこのような動きが出てくる可能性があります。このような動きには断固として反対していく所存であり、健保連は、昨年11月の全国大会でこの点を確認したところです。
協会けんぽ発足により、日本も保険者を選択できる時代に入ったといっても過言ではありません。被用者保険として一元化ではなくお互いに切磋琢磨しながら、協調できる点は助け合って共通の目的のために邁進することが肝要だと思います。
昨年4月にスタートした高齢者医療制度は、当初から大きな混乱を招きました。
徒に不信感を煽ったマスコミの責任も重大ですが、大きな制度改革に際しての国による懇切丁寧な説明が不足していたことは残念なことでした。
私ども健保連としては、拠出金が青天井だった老人保健制度が廃止されたことや、後期高齢者医療制度の運営主体が決められたことなど、一定の評価をしていましたが、ご承知のように、驚くべきことには、この制度の定着をはかる努力をする当事者の長であるはずの、舛添厚生労働大臣自身が、制度見直しの口火を切ったのであります。
健保連としては、この制度の最大の問題は、前期高齢者医療制度に公費が入っていないことであると考えています。この結果、平成20年度の健保組合の予算では、負担が制度改正前と比べて、4,100億円も増えていますが、このうち前期高齢者医療制度への負担増は3,100億円となっています。このことにより、健保組合の9割が赤字予算を組まざるを得なくなるという、組織存続すらも危うくなるような緊急事態に直面しています。
舛添大臣が口火を切った見直し議論に対して、私どもは、75歳で線を引かずに、65歳以上の一本の制度とし、適切な公費投入を行うことを強く主張していきたいと思います。
麻生首相への内外からの批判が厳しくなっていますが、彼の功績があるとしたら、景気回復を前提に、3年後ということですが、消費税率の引き上げが必要であると明言したことだと思います。
前期高齢者医療制度への公費投入の財源確保のためにも、消費税やタバコ税引き上げなどの税制改革が不可欠であると考えます。
今回の医療制度改革のもう一つの目玉である、特定健診・特定保健指導が昨年からスタートしました。健保組合は健康づくり活動で保険者のなかでも先進的役割を果たしてきました。
この制度は健保組合の保険者機能を発揮するまたとない機会でもあり、頑張って成果を上げていきたいと考えます。
今年は丑年です。いつになるかは分かりませんが総選挙の年でもあります。厳しい環境が予想されますが、どっしり腰を据えて国の行く末や、高齢化時代における社会保障の方向を見定める年であってほしいと念じてやみません。
最後になりましたが、皆様のご健勝とご活躍を祈念して私の新年の挨拶とさせていただきます。 |