広報誌「かけはし」

■2008年11月 No.446
 
 
糖尿病VSメタボリックシンドローム

〜特定保健用食品の正しい認識を含めて〜

 10月9日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。健保連大阪中央病院 内科部長 中川智左氏が「糖尿病VSメタボリックシンドローム〜特定保健用食品の正しい認識を含めて〜」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
 

 

中川 智左 氏

 いま世界では糖尿病患者が増え続けています。2006年現在の患者数は約2億4千万人、2025年には3億8千万人を超えると予想されます。日本でも2006年には糖尿病患者820万人、予備群1050万人へと増加、40歳以上の3人に1人が糖尿病またはその予備群であるという時代に突入しました。国連も「糖尿病の脅威」を憂慮し「糖尿病は深刻な合併症を引き起こし経済的負担も大きく世界を挙げての対策が必要である」と決議。インスリンの発見者バンティング博士の誕生日11月14日を「世界糖尿病デー」と定め、当日は世界各地の有名建造物をブルーにライトアップ、日本でも東京タワーや通天閣がブルーに輝きました。
 このような啓蒙活動が必要とされる背景には、糖尿病は初期には自覚症状が乏しいため健診で指摘されても必要な治療を受けないまま放置、病状が悪化して初めて受診するケースが後を絶たない現実があります。また日本の糖尿病患者のうち医療機関を受診しているのは半数に過ぎず、残り半数の人々は網膜症(眼底出血)・腎不全・神経障害・足壊疽など糖尿病性合併症や心筋梗塞・脳梗塞をはじめ全身の合併症が増悪している可能性が高く、大きな問題となっています。さらに糖尿病予備群のなかにはいま話題のメタボリックシンドローム該当者が少なくありません。糖尿病はそれだけでも動脈硬化を促進しますが、内臓脂肪蓄積者に高血圧や高脂血症が合併すれば、糖尿病が初期段階の境界型であってもメタボリックシンドローム状態であり、冠動脈疾患や脳梗塞発症の危険度は非常に高くなります。糖尿病の二大成因はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性です。日本人は農耕民族で粗食傾向にあったため、遺伝的にインスリン分泌量が少なく糖尿病になりやすい。そのうえに過食・高脂肪食・運動不足というライフスタイルの変化で肥満・内臓脂肪蓄積が増えてインスリン抵抗性が増大したことが、糖尿病患者の大幅な増加を招いているのです。
 糖尿病治療の基本は食事療法・運動療法ですが、これはメタボリックシンドロームの治療そのものでもあります。これに関連して活況を呈しているのが健康補助食品の市場です。厚生労働省の定めた「特定保健用食品(トクホ)」は身体生理機能などに影響を与える成分を表示した食品のことで、有効性と科学的根拠や安全性について国の認可が必要です。血糖やコレステロールを正常に保つことを助けるといった内容ですが、あくまで食品であって薬に取って代わるものではありません。
 もうひとつ注意を要するものに食品の「栄養成分表示」があります。表示は商品全量ではなく「100g当たり」や「100ml当たり」として示されることが多く、総量に換算する必要があります。また「強調表示」も要注意です。たとえば「ノンカロリー」「カロリーゼロ」は熱量5kcal未満のものを指し完全な0kcalではありません。「無糖」「ノンシュガー」「シュガーレス」は糖類0・5g未満、「無脂肪」は脂質0・5g未満、「ノンコレステロール」はコレステロール5r未満、「無塩」はナトリウム5r未満(食塩換算0・0127g未満)、「ノンオイルドレッシング」は脂質3g未満であればよく、言葉通りの0gではないのです。しかもこれらはいずれも商品「100gまたは100ml当たり」の表示です。大量に摂ると無視できなくなります。アルコール類は「糖質ゼロ」表示でもアルコールによるカロリーが相当あることに注意が必要です。商品のネーミングやキャッチコピーだけで判断・過信せず、適切な利用で食生活を豊かにしたいものです。


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