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10月30日、薬業年金会館で健康教室を開催。京都大学大学院 医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座 教授 陳 和夫氏が「睡眠時無呼吸の臨床症状と循環・代謝障害」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |

睡眠時無呼吸には無呼吸中に呼吸努力を伴う閉塞型と呼吸努力を伴わない中枢型があり、そのなかで頻度が高いのが閉塞型睡眠時無呼吸です。
閉塞型睡眠時無呼吸の治療は日中の過度の眠気などの臨床症状の改善と、心血管障害発症の予防のために重要です。また、中枢型は心不全患者の予後に関連すると報告されています。 |
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陳 和夫 氏 |
睡眠状態になりますと、舌が重力で下方に落ち気道が狭くなり、いびきが起こりやすくなります。肥満や大きな扁桃腺も気道が狭くなる原因になります。睡眠中に狭くなった気道で息を吸うと陰圧により気道が閉塞することがあり、閉塞型睡眠時無呼吸となります。
無呼吸が続きますと低酸素血症になり、また、息を吸おうとする努力も増しますので、この両者が短期の覚醒を引き起こし、このとき激しいいびきとともに呼吸が再開します。短期覚醒の後に睡眠状態になり、次の吸気のときにまた、気道が閉じます。重症閉塞型睡眠時無呼吸ではいびき、無呼吸を繰り返し、睡眠が分断されます。
睡眠が分断されますので、閉塞型睡眠時無呼吸の影響としては、昼間の過度の眠気・疲労感・集中力の欠如、睡眠中の窒息感・繰り返す中途覚醒、睡眠後の不快感などがあげられます。
発症の危険因子は、肥満・内臓脂肪過多・顔面の形態(骨格等の個人差)・閉経後の女性などがあり、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病患者により高い頻度でみられます。
閉塞型睡眠時無呼吸は日中の過度の眠気などの臨床症状ばかりではなく、重症化すると交感神経機能の亢進、代謝異常などを引き起こし、最終的には高血圧、心不全、不整脈、虚血性心疾患、脳血管障害など生命に関わる症状にまで発展します。なかでも高血圧に関しては、2003年に「高血圧の原因のひとつに睡眠時無呼吸がある」と、アメリカ高血圧学会が認定しました。メタボリックシンドローム予防と治療の目的は心血管障害の予防にありますが、閉塞型睡眠時無呼吸はメタボリックシンドロームにも関連が深いと考えられ、とくに重症例の治療は重要な課題です。
閉塞型睡眠時無呼吸の治療として、経鼻持続気道陽圧(nasal
continuous positive airway pressure:nCPAP)、歯科補助具、減量などがあります。最も有効と考えられているのがnCPAPで、鼻から空気を送り、狭くなった気道を広げることにより空気の流れを作り出す方法です。単純な方法ですが、絶大な効果があります。
歯科補助具は軽症例やCPAP治療継続の困難な方に使用されます。肥満患者の減量は極めて重要ですが、閉塞型睡眠時無呼吸を充分に減少させるまでの減量は困難なことが多く、また時間も要しますので、重症例ではCPAPを行いつつ減量する方法が推奨されます。
CPAP治療の効果として、昼間の過度の眠気など自覚症状の改善や高血圧・心不全・糖代謝の改善などがあげられます。適切なCPAP治療は脳・心血管障害の発症を健常人と同程度に減少させるという研究結果もでています。
睡眠時無呼吸を放置していると、認識力・QOL低下などの障害、日中の眠気、交通事故の増加、医療費の上昇、高血圧、心血管障害などの症状があらわれます。すなわち、生活習慣病と密接に関連しているということがいえます。
閉塞型睡眠時無呼吸は頻度の高い疾患ですので、激しいいびきがあり、肥満、高血圧、また日中の過度の眠気などの症状を感じれば、早期に専門医の診察を受けられることをお勧めします。 |
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