広報誌「かけはし」
 
2008年9月 No.444

 
特定健診・特定保健指導における禁煙支援のあり方
 8月11日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。大阪府立健康科学センター 健康生活推進部 増居志津子氏が「特定健診・特定保健指導における禁煙支援のあり方」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

 喫煙は、脳梗塞や心血管疾患などの原因となる動脈硬化を悪化させます。さらに喫煙は、がんをはじめ多くの疾患の主要な原因となっています。また、近年の研究により、喫煙していると糖尿病やメタボリックシンドロームにかかりやすくなることがわかっています。
 特定健診などの場で短時間の禁煙のアドバイスでも効果が期待できるので、個人に合わせた情報提供や支援(医療従事者による声かけなど)を継続的に行うことが重要です。
 

増居志津子氏

◆情報提供、動機付け・積極的支援
 禁煙支援の方法として、まず禁煙の重要性を伝えます。禁煙が「重要かつ優先順位が高い健康課題である」ことを強調し、禁煙すべきであることをはっきりと伝えます。次に、喫煙は治療が必要な病気であり、有効な治療法があることを伝えます。喫煙習慣の本質は、ニコチン依存症という脳の病気です。
 そこで重要なのが、禁煙を手助けする薬剤の情報提供です。現在ではバレニクリンという飲み薬があります。従来のニコチンパッチに比べ、最初の1週間は喫煙しながら服用する助走期間がありますので、比較的楽に開始できます。ただし、禁煙外来などの専門医療機関での受診が必要になります。ただ、従来のニコチンパッチやガムも正しく使用すれば、効果が期待できます。禁煙補助剤や禁煙治療に関する情報を喫煙者全員に医療従事者からきちんと伝えることが大切です。
 私どもの施設の健診の場で、予備的に介入を行った結果、短時間(1分間)の働きかけでも、禁煙率が約1・5倍高まるという結果が出ています。
 禁煙を手伝ううえで大切なのは、禁煙に関する情報提供のほか、その人が抱えている不安や心配事を聞き出して解決策を一緒に考えることです。それを解決したうえで、禁煙開始日を決めておくとスムーズに禁煙実行につながるはずです。
 禁煙方法は「医療機関で治療を受ける」「薬局・薬店での薬剤使用」のいずれかです。どちらの方法が合っているかは、これまでの禁煙経験や喫煙本数など喫煙者の意向を伺いながら、話し合って決めます。「自分でやめる」という方法はあまりお勧めしていません。

  ◆効果が上がる禁煙支援とは
 

 禁煙支援(指導)者の役割は、まず、情緒的な支援を行うことです。称賛、励まし、共感など禁煙を応援する姿勢が大切です。あわせて禁煙に役立つ知識やスキルの提供が重要です。上手な禁煙方法をアドバイスしたり、禁煙のための傾向と対策を一緒に考えたり、禁煙後の体重増加に対するアドバイスを行います。
 禁煙支援では、初回面接だけでなく、フォローアップが必要です。せっかく禁煙に踏み切った人が禁煙を継続できるよう支援しましょう。
 禁煙は、いつか必ず達成できます。だから喫煙再開した人には、そのことを責めるのではなく、それまでの経過を参考に、再チャレンジに向けて支援しましょう。そして、なかなか禁煙に至らない人には、小さな変化を見逃さずに、なにか前進していることがあれば、それを誉めましょう。こうした積み重ねが禁煙成功につながっていくのです。
 大切なことは、支援者も喫煙者もあきらめずに禁煙に挑戦することだと思います。

 

 
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。