平成19年度に臨むにあたり、健保連では平成20年度からの医療制度改革の本格実施を控え、実務的にも着実に準備・対応を進めていく必要があるとして、後期高齢者医療制度では、費用負担者の意見を反映する仕組みや高齢者にふさわしい診療報酬体系の構築などを、また、特定健診・特定保健指導の義務化では、健保組合の円滑な実施と負担の軽減につながるよう、健保連の主張を引き続き展開し、医療制度改革を実効あるものとするため、課題・問題点の解消に向け、さらなる改革活動を展開していくこととした。
しかし、8月に唐突に提示された「政管健保への国庫負担肩代わり」という理不尽な提案は健保連・健保組合に衝撃を与え、その対応に力を注がねばならなくなり、極めて不本意な状況に置かれることになった。また、財政調整・一元化問題は、再燃することが予測されるため、健保連では、この問題に集中的・精力的に取り組むべく「財政調整・一元化阻止特別委員会」を設置して、日本経団連、連合との連携も強化し、組織的に対応していくことにした。
(1)健保連大阪中央病院健康管理センターを充実強化
平成20年度から導入される特定健診・特定保健指導を視野に入れて、4月に健保連大阪中央病院では健康管理センターを2フロアに拡大し、今後の健診ニーズの多様化と受診者数の増大に対応していくこととした。これまでの経験に基づく独自のノウハウを取り入れながら、保健指導も積極的に展開していくこととし、質の高いサービスを提供していく。
(2)平成19年度健保組合予算の早期集計
6月に発表された早期集計によると、全体の経常収支は2、407億円の赤字で、平成18年度予算比では赤字額が、1、319億円増加しており、赤字計上組合は約7割に達する。拠出金負担額は前年度比10・7%増で、保険料収入に対する割合も約4割を占め、引き続き財政悪化の最大要因となっている。
(3)平成19年度の高齢社会白書
政府は6月8日発表の「平成19年度版高齢社会白書」において、新人口推計により、平成17年時点で5人に1人の高齢者の割合が50年後には2・5人に1人となる予測を踏まえ、高齢者も高齢化社会を支える人材として位置づけることが必要と提起。高齢者が社会に参加しやすい環境が整えば、超高齢化社会でも活力ある社会の構築は可能であると提言した。
(4)経済財政改革の基本方針2007
政府は6月19日の閣議で「経済財政改革の基本方針2007」を決定した。@人口減少下でも持続できる新しい成長の実現A21世紀型行財政システムの構築B持続的で安心できる社会の実現を3本柱として、社会保障関連では、持続可能な社会保障制度の構築や未来への投資と位置づけた少子化対策や医療、介護サービスの質向上・効率化に向けた政策課題を提示した。
(5)政管健保への国庫負担肩代わり
8月10日、平成20年度概算要求基準を閣議了解したなかで、社会保障費を2、200億円削減する具体策として、政管健保への国庫補助に代わる新たな財源を健保組合など政管以外の被用者保険に求める財政調整案が浮上した。
健保連では8月24日に会長見解を、9月6日に会長声明を、9月20日には共同意見(健保連、日本経団連、連合)を発表し、自主・自律を基本とするわが国の保険制度の枠組みを崩す、まさに医療保険制度の根幹に関わる重大な問題として「政管健保への国庫負担の肩代わり」に断固反対し、導入を阻止する活動を強力に展開することとした。
また、医療保険制度の一元化に言及していることについては、個々の保険者の医療費適正化等への努力を減退させ、保険者機能の弱体化と制度の公平性・持続性・毀損につながり、ひいては医療保険制度に対する国民の不信を惹起・増幅することになるとして、断じて許しがたいと強く批判した。
(6)厚労相に舛添要一氏就任
8月27日発足した安倍改造内閣で、厚生労働行政に高い関心を持ち続けている舛添要一氏が厚労相に就任し、医療所掌の副大臣に西川京子氏、政務官に松浪健太氏が就任した。
舛添大臣は就任会見で、社会保障関係費の削減、医療制度改革への取り組みなど、社会保障制度全般の課題について基本的な考え方を述べた。また、9月25日発足の福田内閣でも舛添氏を厚労相に再任した。
(7)平成19年度健保組合全国大会を開催
11月14日に開催された健保組合全国大会では「国庫負担肩代わりを断固阻止する総決起大会」を副呼称として@保険者機能を喪失させる国庫負担肩代わり案の断固阻止A高齢者医療制度施行に伴う実効ある激変緩和措置の実施B特定健診・特定保健指導の円滑実施に向けた支援C患者中心の医療の実現と国民が納得する診療報酬改定の4項目を全健保組合の総意として決議した。
(8)政管健保の支援措置に苦渋の選択
健保連では、12月13日常任理事会、14日理事会を緊急開催し、政府から正式要請のあった平成20年度の政管健保に対する国庫負担肩代わりについて協議した。「あくまで支援措置には反対」や「当初案の修正を一定の成果として受けとめる」など議論百出したが、最終的には極めて不満だが、@平成20年単年度限りの措置とするA前期高齢者に対する公費投入を早急に検討する、の2条件を付して容認することを決め、全健保組合の理解と協力を求めた。
(9)「社会保障国民会議」の設置
福田首相が主宰する「社会保障国民会議」は、1月29日初会合を開き、急激に膨らむ社会保障給付と負担について、医療、年金、介護などを制度横断的な視点で議論し、@サービス保障(医療・介護・福祉)、A持続可能な社会の構築(少子化・仕事と生活の調和)、B所得確保・保障(雇用・年金)の3分科会を設置して、6月に中間報告を、今秋を目途に最終報告を策定することとした。
(10)平成20年度診療報酬改定
中医協は、2月13日の総会で、平成20年4月からの診療報酬改定の具体的内容をまとめ、厚労相に答申した。診療報酬本体+0・38%(医科0・42%、歯科0・42%、調剤0・17%)、薬価・保険医療材料△1・2%の合計△0・82%の枠組みで実施。平成14年度以降、4回連続のマイナス改定だが、本体部分のプラス改定は平成12年度以降8年ぶりの引き上げ改定となった。
支払い側の求めていた「診療所再診料引き下げ」は見送られたが、附帯意見のなかで@初・再診料などの基本診療料の水準やあり方の検討A病院勤務医支援の検証の実施B診療報酬体系の簡素・合理化Cジェネリック医薬品の普及と使用促進等が盛り込まれた。
(11)「財政調整・一元化阻止特別委員会」の設置
平成21年度以降、再燃することが懸念される医療保険制度間の財政調整・一元化問題への対応を協議するため、特別委員会を設置した。平成21年度予算概算要求の動向を焦点に報告書を作成し、組織的対応策の基盤とする。また、日本経団連、連合との連携を強化し、財政調整・一元化に反対する健保連を含む3団体の定期協議の開催などにより、共同活動の地盤を固めていくこととしている。
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