広報誌「かけはし」

■2008年8月 No.443
 
 
− 肝疾患と糖尿病 −

− “鼻カメラ”って本当に楽なの? −

 7月14日、薬業年金会館で第3回健康教室を開催。健保連大阪中央病院 消化器科部長 原 直樹氏が「肝疾患と糖尿病」、同じく消化器科部長 林 隆正氏が「“鼻カメラ”って本当に楽なの?」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

   肝疾患と糖尿病
 

 

原 直樹氏

●糖尿病
 日本人の糖尿病患者数は増加の一途をたどっています。2002年の厚生労働省の調査によると、患者数は全国で740万人、予備群も含めると1620万人にのぼります。遺伝的な素因に加え、生活習慣の変化による肥満やインスリン抵抗性要因が増加しているためと考えられています。また、インスリンは全身の臓器でブドウ糖をエネルギー源として利用できるように助ける働きがあるため、この働きが不足するとさまざまな代謝障害をきたし、高度になると意識障害、昏睡などの重篤な合併症を引き起こします。

●肝疾患
 肝細胞に中性脂肪が沈着して肝障害をきたす脂肪性肝疾患は、以前はアルコールによる障害が多かったのですが、糖尿病や肥満によっても同様な肝障害が生じることがわかってきました。これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼んでいます。
 さらに、肝組織で壊死、炎症や線維化を伴う脂肪性肝炎を、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼んでいます。現在では、NASHはNAFLDの重症型と考えられています。
 また、最近ではNAFLD、NASHは肝臓でのメタボリックシンドロームの表現型といわれています。

●まとめ
 さまざまな肝疾患患者では、糖代謝異常が増加していることが知られていますが、肝硬変の10〜40%に糖尿病がみられ、40〜90%に耐糖能異常が認められることから、肝硬変の重症化に伴い糖尿病の頻度が増加するといえます。
 NAFLDは、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧などを伴っていることが多く、とくにNASHはメタボリックシンドロームの合併率が約50%と高くなっています。NAFLD、NASHの治療は食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により是正されることが知られています。それに加えて、酸化ストレスやインスリン抵抗性などNASHの病態の改善を目指した治療が試みられています。

   “鼻カメラ”って 本当に楽なの?
 

 

林 隆正氏

●太さは“経口”の半分
 経鼻胃カメラ(鼻カメラ)は、従来使用している経口カメラ(約10o)の約半分(約5o)の太さのファイバーを鼻から挿入し、食道や胃などを検査するものです。2002年より実用化され、健保連大阪中央病院でも昨年4月から使用を始めました。
 鼻カメラは“えづく”という咽頭反射がかなり少ないので、経口カメラより楽なのは間違いありません。以前に経口カメラを受けた人の90%以上の人が、鼻カメラの方が楽だと答えています。ただし、鼻カメラは全くしんどくない検査ではありません。前処置で鼻の中に薬やチューブを入れるときに、プールで鼻に水が入ったときのような“つーん”としみるような痛みを感じることが多いです。微量のものも含めると、10人に1人ぐらい鼻出血もあります。

●経鼻胃カメラ(鼻カメラ) の利点・欠点
 鼻カメラの利点としては、@咽頭反射がほとんどなく、苦痛が少ないA検査中、苦痛が少ないので、モニター画面で患者さん自ら自分の胃を観察できるB検査中会話ができるので、気づいた点など医師に質問することができるC前処置の段階で、鼻に痛みがある場合は、鼻カメラを使って経口より挿入できる(カメラが細いので、以前の経口カメラより楽に検査できる)、などがあげられます。
 欠点としては、@鼻中隔の変形や、鼻の炎症があると鼻腔が狭く、鼻からカメラを挿入することができない場合があるAカメラが細く、送気・吸引が弱いので、術者にとっては操作が若干しにくい、などがあげられます。
 経口カメラに比べ細く、機器を通すスペースが狭いので、止血やポリープ切除などの治療や処置は行わず、検査(観察)に使用されます。



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