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7月22日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。武庫川女子大学 生活環境学部 食物栄養学科 教授 内藤義彦氏が「特定健診結果の見方とその後の対処法」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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平成20年4月から始まった特定健診・特定保健指導ですが、現時点では先が見えない状況で、今後の展開が気になるところです。後期高齢者(長寿)医療制度がマスコミ等で話題になっていますが、特定健診・特定保健指導の内容や態勢が、今後、議論の的になることは必至でしょう。
このセミナーでは、この健診をどう位置づけて、その健診結果をどう読み取って、その結果を踏まえてどう対処すべきかについて、考えてみたいと思います。 |
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内藤義彦氏 |
◆特定健診の位置づけ
少子高齢化が急速に進むわが国において医療費の適正化は喫緊の課題であり、医療費および死因に対して生活習慣病の影響する部分は大きいことから、生活習慣病対策を強力に進めていく必要があります。そこで、医療制度構造改革の柱として、(1)生活習慣病有病者・予備群25%の削減目標を設定、(2)健診・保健指導にメタボリックシンドローム(MS)の概念を導入した標準的なプログラムを構築、(3)医療保険者に特定健診・特定保健指導を平成20年度より義務化(40〜74歳)、が提示されました。この特定健診・特定保健指導は、従来の労働安全衛生法による定期健康診断や老人保健法による基本健康診査の問題点を踏まえ、成果(結果)を重視し、そのためのさまざまな方法(戦術)を提示しています。とはいえ、机上で立てた作戦で想定したとおりにことが運ぶとは限らないものなので、あらかじめ内容を精査し不安要因について考察しておくことは有意義と考えます。
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◆特定健診結果の見方 |
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先に触れたように、特定健診は、糖尿病、MS、ひいては動脈硬化を重視する立場から、従来の健診項目と大差ないようにみえますが、(1)腹囲の新規導入、(2)HbA1cまたは(随時ではない)空腹時血糖測定、(3)HDLおよびLDLコレステロールの測定、(4)喫煙歴の重視など、かなりこだわりのある項目の選び方・扱い方をしております。また、保健指導対象者の選定および階層化には国内8学会によるMSの判定基準を参考にしています。また、多くの項目の保健指導判定閾値を比較的低い値に設定し、厳しいスクリーニング基準になっています。つまり、これまでは見過ごされてきた人達が保健指導の対象者となり、また、MSに関連する検査異常が多い人ほどより濃厚な指導対象になる仕組みになっています。この方法は、発症リスクのある人をより多くカバーし、リスク要因の相加的効果を加味したもので有意義なものですが、いくつか不安材料もあります。指導の階層化がMSに偏っていること、単一項目のレベル分けが保健指導と受診勧奨に単純化されており、単一の疾患(例えば、高血圧)に対するきめ細やかな対応がされないおそれがあります。また、受診勧奨判定の運用に曖昧な部分があり、健診(指導)機関と受診医療機関との間で受診者への対応に混乱が生じる可能性があります。こうして偽陰性を減らそうとすると偽陽性が必ず増えることになり、過剰医療や費用対効果の点で問題が生じるおそれがあります。これらのことはあらかじめ理解しておくべきでしょう。 |
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◆健診結果に基づく
対処法 |
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指導対象者を指導の場に確実に参加させる方法、行動変容の準備性の低い人も実行に導く方法、行動を継続的に維持させる方法など、実務で必要なことが十分に論じられていません。今後の施策の改善や、それぞれの現場での実情を踏まえた対応が必要になると考えられます。 |
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