広報誌「かけはし」
 
■2008年7月 No.442

 
職場のメンタルヘルスケアについて

─ 復職支援の新しい試みとこれからのケアの方向性 ─
 

 6月25日、大阪商工会議所で第1回心の健康講座を開催、48組合から99人が受講しました。この日は、帝塚山大学大学院 臨床社会心理学専攻 産業心理臨床領域 教授 森下高治氏が「職場のメンタルヘルスケアについて−復職支援の新しい試みとこれからのケアの方向性−」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

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 職場でのストレスには、役割ストレス(葛藤、あいまいさ、過重)、対人関係、作業・労働条件、仕事の質と量などがあげられ、心身症状(ストレイン)として、身体的・精神的疲労感を感じます。その結果、神経系、循環器系、消化器系などに影響がでる場合があります。

森下高治氏

 ◆ ストレス対処法
 人は、ストレス発生の局面にあわせてさまざまな対処法を適用します。
 心の健康維持・増進を図るため、休養・休息をとり、リラクゼーション効果を得ることや、趣味などで気晴らしを行うことなどが効果的です。
 ものの見方や考え方を変える「認知法」という手法で、ストレス自体の負の感情を軽減することができます。たとえば、コップに半分ビールがあるとします。このときに、「まだ半分ある」と思うか、「もう半分しかない」と思うかでは、感情面に大きな違いがあります。
 また、個人を取り巻くさまざまな人からの援助を活用する「ソーシャルサポート」などの方法もあります。これは、「手伝う、与える」などの物理的援助と「慰める、信じる」などの心理的援助によるものです。さらに、職場で最も大きな援助を与えられるものは「上司のサポート」です。
 ◆ 相談の留意点
 聴き手の基本的条件として、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャースが提唱した、無条件の肯定的配慮、共感的理解、純粋性(自己一致)があげられます。相手を尊重し、共感を大事にする(相手の世界をあたかも自分のもののように感じとる)。基本技法としては、相槌やうなずき、繰り返しなどがあり、これらが大切なのです。こういった手法を傾聴法といいます。反面、精神論や、叱咤激励、説教・説得、安易な気晴らしの勧め、素人判断の不適切な助言はよくありません。
 ◆ 復職のために
 復職までには3段階の時期がありますが、休職後すぐの不調低迷期には、家族を通して、「ゆっくり休んで、しっかり治して」とのメッセージを伝言するなど、直接本人との接触をさけます。
 2〜3カ月した頃の回復初期には、本人と電話でもよいので様子を尋ね、「しっかり治して、待っているから」と伝えるなど、本人との接触を持ちます。
 3カ月以上経った回復期に本人は、普段の生活に戻し、きっちり睡眠・食事をとるようにしたら、働こうとする気持ちもでてきます。
 ◆ ストレス対策・予防のポイント
 @できる限り早いうちから休養をとる(Rest)A仕事以外の活動で、くつろぎの時間をもつ(Relaxation)Bかざらないありのままの自分(Real Self)C冷静・柔軟な気持ちで、論理的に対処する(Logic Thinking)、という3つのRと1つのL(3RL=スルリと乗り切ろう!)が大切です。
 また、健康習慣やワークライフバランス(過ごし方、生き方に関わるライフ・スタイル)を見直していくことも重要です。