■2008年5月 No.440
わかりやすい言葉で制度普及を
−特定健診・特定保健指導の制度定着−
医師が使う専門用語について、国立国語研究所が全国の医師を対象に調査した結果、患者に意味が伝わらなかった言葉が、736語にのぼることがわかった。
このうち最も多くの医師が誤解を受けた言葉としてあげたのは「予後」。一般的には、病気をした後の経過や病気のたどる経過についての医学的な見通しを指す言葉だが、がんの診療の際には「余命」の意味で使うことが多いという。これは医師側の言葉づかいが日本語として適切さを欠くケースとみられる。
このようなことから、同研究所は今後、医療用語をわかりやすく言い換える例などを示した「病院の言葉の手引き」(仮称)を作成する。
これと同じように、われわれ健保組合が日常で使う「現物給付」「現金給付」などの基本的な用語も、加入者がそれを理解できず、意味が通じていない言葉は非常に多い。
例えば、「現物給付」とは、保険医療機関において、加入者(患者)が病気になったときに、お金ではなく医療サービス(現物)を給付されるということである。これは、われわれにとってはごくあたり前の言葉である。しかし、加入者の方に「現金給付」や「償還払い」といった言葉を使っても、その意味や仕組みを理解してもらうのはなかなか難しい。
いま、なにかと議論にのぼっている本年4月1日から施行された「後期高齢者医療制度」も、「後期」という言葉が、当事者に不評で、即日国は通称として「長寿医療制度」の使用を通知した。
しかし、呼称を変えるだけでこの制度が周知、理解されるものではない。厚労省からは4月下旬、各健保組合あてに長寿医療制度の周知依頼があった。しかし国は、75歳以上の高齢者をはじめ国民に対し、もっと早い時期からこの制度の意義や趣旨および具体的な内容を説明しておくべきであった。
また、その説明文書なども高齢者の視点に立ったわかりやすい言葉や図表を使うなど、もっと工夫が必要ではなかったか。そうしておけば、いまのような混乱も少なくてすみ、もう少し円滑に新制度がスタートできたのではないだろうか。
このことはわれわれにとっても他山の石としなければならない。本年4月から特定健診・特定保健指導が保険者に義務化された。現段階においても各健保組合でその取り組み方に格差は出てきている。しかし、この制度はまだ始まったばかりである。
今後、健保連は、さまざまなポスターやパンフレットをつくり、一層の周知を図るとのことである。各健保組合も、いままで以上に加入者や事業主に対し、わかりやすい言葉による適切な説明を行うことにより、この制度が普及・定着し、将来的に成果が得られるよう努めていかねばならない。
(K・M)