広報誌「かけはし」
 
■2008年4月 No.439

財政調整・一元化を阻止

20年度事業計画と予算決まる


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 健保連大阪連合会は3月26日、ホテルモントレ大阪で総会を開き、平成20年度の事業計画と収入支出予算を決定した。

 

 少子高齢社会が進行するなか、平成20年度は、平成18年度から順次施行されてきた医療制度改革の転換となる重要な年である。4月から、保険者にとって大きな課題である特定健診・特定保健指導の義務化が実施され、また保険者が府県単位の広域連合となる後期高齢者医療制度が創設されて、負担と給付が連動する仕組みが取り入れられる。
 さて、昨年8月、平成20年度予算編成に向けたシーリングで突然浮上した政管健保への国庫負担の肩代わり問題は、大阪連合会理事会でも全会一致で断固反対を決議するなど、健保組合・健保連挙げて撤回活動を行った。結果として、当初案で出されていた医療保険制度の一元化問題、財政調整論は撤回でき、負担額は減額できたものの、極めて不満な形で政治決着がなされた。なお、健保連では平成21年度以降の財政調整・一元化を阻止するため特別委員会を設置し、集中的に議論していくことを決めた。
 このような情勢のなか、平成18年度の健保組合決算は、被保険者数の増加など収入増となったが、支出面では退職者給付拠出金の大幅増などで、黒字額は前年度比で減少した。全体として4年連続経常黒字となったものの、拠出金の保険料収入に占める割合は36%と増加しており、今後、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、経過的に存続する退職者給付拠出金、病床転換支援金、政管健保への支援金、さらに特定健診・特定保健指導実施のための経費などを考慮すると、健保組合の財政見通しは極めて厳しい状況にある。
 また、平成20年度の診療報酬改定は、全体改定率△0・82%と4回連続のマイナス改定で決着したが、本体部分はプラス0・38%と8年ぶりの引き上げとなった。健保連では医療における資源配分の歪みや無駄を是正し、国民が納得できる効率的な医療提供体制の構築をめざしており、われわれの意見が着実に前進するよう粘り強く主張していく必要がある。
 大阪連合会では、各健保組合、各地区会はじめ、理事会、各委員会等において、常に問題点を共有しながら、真摯な議論を重ね、自主・自律運営が図れる組合方式のもと、保険者機能を効果的に発揮していくことができ、安定した事業運営ができる医療制度の実現へ一層の努力を続けていくこととしたい。


  ●総会の経過
 

 加藤会長が議長となり、総会の議事録署名者に、ユニチカ健保組合、大阪機械工具商健保組合を指名、議案の審議に入った。
 なお、総会開会に先立って、近畿厚生局伊東社会保険管理官からあいさつがあった。

   
 議案第1号
  平成20年度事業計画(案)
 議案第2号
  平成20年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 

平成20年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること

  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 

平成19年度特別保健福祉事業補助金事業(共同事業分)会計収入支出予算および同説明。
 本部総会において全国一括決議を受けている旨報告、承認された。

 
 

 以上のとおり、全議案の審議が終了した後、来賓として出席された健保連本部池上秀樹理事から「政管健保への支援措置」関連、「新高齢者医療制度関係」について中央情勢報告があった。
 また、健保連大阪中央病院大橋秀一院長よりあいさつがあり、岩渕勝紀事務局長から「大阪中央病院健康管理センター」の紹介があった。

   
 ○当日の出席状況
  出 席 165組合  
  委任状 31組合  
 ○来 賓
  近畿厚生局健康福祉部
    社会保険管理官

伊東留真運氏

    保険課長

中内  明氏

  健保連本部    
    理事

池上 秀樹氏

  大阪連合会    
  顧問

内田 一男氏

   

早司 欣弘氏

 
 加藤会長あいさつ (要旨)

 国内の政治は、昨年7月の参議院選挙での与野党逆転で、衆参両院でそれぞれが多数を占めるという対峙した姿となっております。このねじれ国会が政治の停滞を招き、継続する諸問題の解決が遅れるなど、国の内外に大きな影響を及ぼしております。また、アメリカのサブプライムローン問題に端を発したドル安、円高に加えて原油高など、市場の不安定要因が増加しており、世界経済は先行き不透明感を強め、収束の兆しを見せておりません。
 そのようななかで、昨年8月上旬に「政管健保への国庫負担肩代わり」が突然浮上してまいりました。被用者保険者間における格差解消という美名のもと、私どもに負担を強いてまいりました。
 健保連では会長声明や日本経団連や連合との連名による要請、また全国大会での決議や要請行動により断固阻止を訴えてまいりました。最終的には、12月に舛添厚労相から直接要請があり、2つの条件すなわち@20年度限りの単年度措置とすること、A前期高齢者に対する公費投入の早期検討を進めることを付けて、極めて遺憾ながら決着することになりました。健保連では、財政調整・一元化問題が、再燃することが予想されるため、「財政調整・一元化阻止特別委員会」を設置して、集中的に議論していくこととしています。
 この問題に関連して、3月中旬に政管健保の平成19年度の決算予想が報道されましたが、1800億円の赤字計上となる見込みであり、平成20年度も赤字が続くといわれています。政管健保は10月から全国健康保険協会に運営が移行しますが、健保組合への負担肩代わりを21年度以降も延長する動きが出てくることは明らかであります。これは絶対に許してはなりません。「肩代わり延長阻止」が、今年の最大の課題であります。
 前期高齢者医療制度では、「納付金」として調整金を拠出せねばなりませんし、後期高齢者医療制度では、「支援金」として負担を強いられます。これまであった「老人保健拠出金」は廃止されますが、退職者給付拠出金の継続や病床転換支援金などを合わせ、新たな制度を支える財政負担は、これまで以上に重くなることが懸念されます。
 健保組合の20年度予算の速報値を見ますと、高齢者医療制度の納付金等の負担を前年度の拠出金と比較して、約20%も大幅に増加していることが判明しました。健保連では、厚生労働省に@健保組合の予算を早急に把握し、実態に即した措置を講ずることA諸係数の設定は十分な事前協議が図れるようにすること、を要請しています。
 この4月からは、保険者に義務付けられた特定健診・特定保健指導が施行されます。予防医学としては、世界でも初めての試みであります。
 しかし、特定健診・特定保健指導に対する新たな経費負担が発生します。中長期的にみて費用対効果が健保組合にとって有効に作用するのか、慎重な検証が必要であります。また、実施面では、医療機関との契約関係が、全国的にみて準備が遅れているのが実態であり、関係者に体制整備を早急に進めるよう要請しております。
 これに関連して、健保連では共同情報処理システムを構築してまいりましたが、ここにきて立ち上げに遅れがでているとのことで、ご参加いただいた皆さまに、大変ご迷惑をかけております。一刻も早い対応を促しておりますのでどうかよろしくお願いいたします。
 このように、健保組合をとりまく四囲の情勢は、問題が山積しておりますが、皆さまと力を合わせて諸課題の解決のために全力を挙げて取り組んでいきたいと考えます。
 本日の総会の議題は、平成20年度の事業計画および予算となっておりますので、十分なご審議を賜りますようお願い申しあげまして、簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。


事 業 計 画
 
基本方針〕
(1)総括
   健保連本部との連携を一層密にして、下記事項について取り組む。
 

@健保連本部と相呼応しながら、理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A政党・国会議員への要請活動は、健保連の主張を国政の場に反映させるため、一層積極的に推進する。
B行政機関とは、健保組合の円滑な運営のため、密接な連携を保つ。
C経営者団体および労働団体との連携強化や、医師会等医療関係団体との意見交換を通じて相互理解を深める。
D「かけはし」「ホームページ」などの広報活動を通じて、健保連の考え方の浸透を図る。
E大阪府保険者協議会では、代表保険者として円滑な事業推進を図るとともに、健保組合の意向を踏まえて、医療費の適正化や有効な保健事業に取り組む。
F国保運営協議会では、被用者保険サイドの意向を反映させる取り組みを行う。
G「けんぽれん病院情報『ぽすぴたる!』」への登録促進について、引き続き積極的に取り組む。
H健保連地域懇談会では大阪連合会の意見を反映させるとともに、近畿地区各連合会との連携を図る。
I大阪中央病院健康管理事業の利用促進を支援する。
Jその他、時宜に応じた諸対策を実施する。

(2)組織活動の継続強化
 

 大阪連合会の意思決定および情報連絡等が円滑に推進できるように、理事会等を開催する。

 

@理事会および総会を開催する。
A地区正副会長会議、各種委員会等を開催して対策を協議する。
B地区会を中心とした諸活動の充実を図る。
C新年互礼会(第43回)を開催する。

(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、下記活動を実施する。

@会員組合に提供する情報の充実を図る。
A組合予算編成および組合事務に関し、行政機関および健保連本部と連携を密にして円滑に推進する。
B組合予算編成事務説明会を開催する。
C永年勤続者表彰伝達式を挙行する。
D会員組合のIT化および特定健診・特定保健指導の推進に対して支援する。
E会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト、特定健診・特定保健指導等の相談を実施する。

事業活動〕  
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行

@親しみやすく読みやすいものとし、併せて広く対外的な広報誌としての誌面づくりおよびその充実を図る。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療保険制度等改革関連(とくに財政調整論について)。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と事業運営。
・大阪中央病院および同院健康管理センターの利用促進。
Bよりよい誌面づくりを目的にアンケート調査を実施する。

(2)広報活動の強化

@会員組合の広報活動を支援するため「広報研究会」を開催する。
A大阪連合会ホームページを充実強化する。

(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張の浸透を図る。

・地元選出および社会保障関係国会議員
・経営者団体および労働団体
・その他、必要に応じた関係者

 
2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合の円滑な事業運営のため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上

@「事務長研修会」を開催する。
A「組合業務別実務講習会(適用・給付・徴収・庶務会計関係)」を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護(特定健診・特定保健指導を含む)にかかる研修会を開催する。
D健保事務相談を実施する。

(2)組合業務の改善・合理化の推進
    パソコン研修会を開催する。
 
3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化

@大阪社会保険事務局(近畿厚生局)との意見交換会を開催する。
A医療関係団体との意見交換会を開催する。
B大阪府保険者協議会との連携を図る。
C国保運営協議会委員の活動強化を図る。

(2)支払基金との連絡・調整の緊密化

@事務連絡協議会を開催する。
A審査委員との意見交換会を開催する。

(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用

@医療費の地域間格差の是正を推進する。
AレセプトのIT化を推進する。
B柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費にかかる支給の適正化を推進する。
Cレセプト情報管理システム等を活用して医療費の適正化を推進する。

(4)レセプト点検に関する調査・研究

@診療報酬の改定等に関する説明会を開催する。
Aレセプト点検に関する研修会を開催する。
B第三者行為にかかる求償事務についての研修会を開催する。
C地区会レセプト研究部会に、再審査査定事例集を配布し、その活用を図る。

(5)医療対策室の活動強化

レセプト・保険給付相談を実施する。

 
4.健康開発共同事業の推進と保健福祉共同事業の実施
 特定健診・特定保健指導への対応に重点を置き、会員組合において保健事業の円滑な実施が図れるよう支援を強化する。
(1)健康教育の実施

メタボリックシンドロームをはじめ、メンタルヘルス、救命・救急等をテーマにした健康教室・講習会を開催する。

(2)保健師活動の実施

@会員組合における特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援するため、保健師共同設置事業を実施する。
A保健師活動のレベルアップを図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師活動における個人情報保護の徹底を図る。
C保健師連絡協議会への加入の促進を図る。
D健保連大阪中央病院の健康管理事業との連携を図る。

(3)大阪府保険者協議会との連携

代表保険者としての円滑な事業の推進に努める。

(4)エイズ等感染症対策
    エイズ等感染症に対する正しい知識の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    @保養施設等の共同利用の契約と利用促進を図る。
Aプール利用券の斡旋を行う。
(6)健康ウオーキング等、各種健康づくり活動の後援
 
5.総合組合の運営助成
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
   

@総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を把握する。
A特定健診・特定保健指導の実施上の問題点を検討する。
BIT化による組合業務推進について検討する。
C健保組合の再編・統合について検討する。

 
6.近畿地区各連合会との連携
 諸事業の実施に際しては、必要に応じて近畿地区各連合会と連携を図り、活動を積極的に推進する。
 

平成20年度収入支出予算概要(単位 千円)