広報誌「かけはし」
 
■2008年4月 No.439
時評

効率的・効果的な医療の実現を

−20年度診療報酬改定に関して雑感−


 4月から平成20年度の診療報酬改定が実施された。今回の改定率はマイナス0・82%。その内訳は、医療行為など診療報酬本体がプラス0・38%、薬価・診療材料がマイナス1・2%となっている。
 今回の改定で診療報酬点数が重点配分されたおもな項目は、@産科・小児医療対策A病院勤務医の負担軽減策B救急医療対策─など。逆に適正化が図られた項目は、@外来管理加算の見直しA入院基本料の見直しB後発医薬品の使用促進C軽微な処置の包括化Dコンタクトレンズ検査料の見直し─などである。
 また、新しい後期高齢者医療制度向けに、@在宅療養生活の支援策A慢性疾患等に対する継続的な管理の評価B終末医療について医療関係職種が共同実施した場合の評価─が盛られている。
 注目したい点は、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進策である。これまでは、処方せんに医師のサインがあるものに限り、後発品の使用が可能とされていた。今回、逆転の発想で、「後発品への変更がすべて不可の場合、医師がサインすること」と変更された。これによって、医師の署名があっても変更したのが10%に満たないという後発品の利用が高まり、医療費の節約と同時に患者負担の軽減が期待できる。
 マスコミ報道で盛んに取りあげられた産科・小児、救急医療、病院勤務医など、いわゆる医師不足や不採算部門対策については評価され、点数が加算された。しかし、診療報酬上の加算は当面の政策誘導策にすぎない。むしろ、ますます専門分化する診療科ごとの医師の偏在や、地域的な医療体制の整備、医育教育のあり方など、根治的な医療サービス体制の改革が望まれる。
 一方、財源効果が大きい再診料の見直しについては、診療所が71点の据え置き、病院が3点引き上げの60点となり、格差は改善されなかった。健保連はじめ支払い側は、病院と診療所間の再診料格差について、「必ずしも病院と診療所の機能分化・連携を推進する効果が期待できない。診療所の再診料を引き下げ、病院と診療所の格差是正を進めるべき」と主張していた。結局、この再診料など基本診療料については、次回以降の診療報酬改定での検討課題とされた。
 診療報酬の配分の問題は、今後も中医協(中央社会保険医療協議会)で審議される。健保連はじめ支払い側はその場に臨んで、「患者の視点の重視」をキーワードに、限られた医療費資源が有効に活用され、効率的・効果的な医療が提供されるよう求めていくことが重要である。増加を続ける医療費の問題は、健保組合の医療給付費や、健保組合から他の医療保険制度への諸々の拠出など、「負担」を議論する際のもとになる。今後の医療費の動向を注視したい。
  (T・M)