広報誌「かけはし」
 
■2008年3月 No.438

 
ストレスと病気
 

 1月31日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。なかがわ中之島クリニック院長・中川晶氏が「ストレスと病気」をテーマに講演されました。(以下に講演のポイント)

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中川 晶氏

 ストレスを受けると、人によっては、@抑うつ、不安(うつ病や神経症)といった「こころ」に反応が出る場合、A心身症(消化性潰瘍、筋緊張性頭痛など)といった「身体」に反応が出る場合、Bアルコール依存症、買い物依存、過食症など「行動」に出る場合があります。
 また、ストレスを受けてもまったく変化のない人もいます。しかし、このような人に多いのは、感情を言語化することが苦手、つまり、泣き言をいわなかったり、文句のいえない人だともいえます。こういった状態はアレキシシミア(心身症になりやすい性格傾向)と呼ばれています。感情を極端に抑えるタイプの人なので適度に発散するようにしましょう。
 ◆ 不安の病気
 ストレスを感じ、不安感が高まると、さまざまな症状が引き起こされます。たとえば、強迫性障害(いつまででも手を洗うなど)や転換性障害(足にはまったく異常がないのに歩けないなど)、解離性障害(記憶喪失、遁走、多重人格)などです。
 不安は覚醒度を上げる反応であり、身体的には、下痢、めまい、高血圧、動悸、散瞳、落ち着きがない、失神、頻脈、胃の不調、頻尿などの症状があります。これは、自律神経反応を中心とする症状です。私の父(故・中川米造阪大名誉教授)の言葉にこんなものがあります。「こだわり・こわばりの悪循環」。これは、こだわりをもつと体がこわばり、体がこわばってくると不安になるということを表現した言葉です。不安とは、身体に影響を大きく及ぼすものなのです。
 ◆ 軽症うつ病
 抗うつ剤といえば、副作用が大きく、使用をためらいがちなものでした。それでも使用していたのは、うつ病が深刻な病気だったからに他なりません。ときには、自ら命を絶ってしまう結果になることもまれではありません。現代では、ストレスが絡む軽症のうつ病が増加し、その対応の仕方は非常に重要です。ごく軽症の場合、不安感やイライラ感があり、焦燥感に襲われる段階では、とりあえず「だらだらと寝ている」ことが大事です。このとき、周囲の人間が行動を促したり、騒ぎ立てなくても、寝ていることに飽きれば本人はなんらかの行動を起こし始めます。次に、ゆううつ感がある段階で大事なのは、散歩など「ぶらぶらする」ことなのです。急に今までどおりの生活に戻ることは困難であり、また、その必要もありません。そうして少しずつエネルギーを蓄えて、おっくう感をなくすよう「ぼちぼち仕事に(学校に)行こうかな」という段階になります。ゆっくりと普段の生活スタイルを取り戻すことが大切なのです。
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 うつ病とは、ストレスが大きく関係し、再発・再燃が多い病気です。またうつ病は特殊な病気ではなく、有病率は5%といわれています。
 うつ病はれっきとした病気であり、周囲の理解も非常に大切です。ストレスがたまるのは仕方がないことかもしれません。しかし、それをため込むのではなく、ときにはガス抜きをすることも、ストレスと上手につき合っていく方法なのです。