■2008年1月 No.436
後発医薬品のさらなる使用促進を!!
─ 処方せんの再度の様式変更を機に ─
後発医薬品の普及度は、数量シェアの統計によるとイギリス、アメリカ等では50%から60%を占めているが、日本では17%弱にとどまっている。日本では医療費の自己負担が低く抑えられていたため、患者自身に負担感が少なく医療費に対する患者のコスト意識が働きにくかったことが主な要因とされている。しかしながら、日本は急速なテンポで少子高齢社会に突入し、医療費の増大が日本経済に悪影響を与えかねないということで、平成18年度に大掛かりな医療費適正化対策を中心とする医療制度改革が行われ、高齢者にも相応の負担を強いる内容も導入された。
こういった背景により後発医薬品の普及は医療費の自己負担を軽減し、ひいては国民医療費も節減できることから、文字どおり“特効薬”の役目を果たしてくれるものと大きな期待が寄せられた。
また、平成18年度の診療報酬改定で処方せんの様式が改められ、処方医が「後発医薬品への変更可」欄に署名等をした場合、先発医薬品から後発医薬品への変更を認める仕組みが導入されたことにより、さらに使用促進につながる期待感が高まった。
しかしながら、平成19年7月に実施された中医協の調査結果では、処方せんの「後発医薬品への変更可」欄に処方医の署名等がある処方せんは全体の17・4%、このうち実際に変更されたのは8・2%であった。したがって、全処方せん枚数に占める後発医薬品変更処方せんは1・4%と完全に期待を裏切られる結果となっている。この数字の低さの要因としては、@後発医薬品の安定供給体制の問題、A後発医薬品に対する効能等の不安感の問題等があげられている。
後発医薬品の安定供給は厚生労働省の指導に委ねるしかないと思われるが、保険者として、後発医薬品に対する患者の不安感を取りのぞくことは十分可能であり、後発医薬品のメリットに関する情報提供にさらに努力すべきである。また、患者にメリットがあるから後発医薬品の使用率が上昇して当たり前と机上論にとどまり、楽観していたことの反省も併せて行うべきである。
厚生労働省は来年度の診療報酬改定時に、後発医薬品の使用促進の環境整備を目的として、現行の処方せんの取り扱いとは逆の発想で、「処方医の署名がなければ調剤薬局は、患者の同意を前提に後発医薬品に変更できるようにする」などの見直しを行うこととしている。
処方せんの様式が再度変更されることにより、使用促進が見込めそうではあるが、さきに述べたように保険者は、患者の後発医薬品への不安感の払拭に手を抜かずに努力すべきである。
(M・T)