■2007年12月 No.435
政管への国庫負担「肩代わり」に反対
─ 健保組合の経営努力や保険者機能をそぐ ─
政管健保と健保組合の違いをここにあげてみよう。
まず、形態面をみると、健保組合では小集団、適正規模のために健康づくり対策をはじめ、健保組合が行う諸対策が徹底される。いわばフットワークがいい組織である。そのうえ、健保組合は労使双方で構成され、職場の近くにあるため、職制の協力を非常に得られやすい。この点、社会保険事務所のイメージと比較してみてはいかがであろうか。
つぎに、医療費支出面での取り組みについてである。@保健師による事業所での保健指導A健康講座による啓発活動Bきめ細やかな医療費通知の実施C電子化によるレセプト点検の強化D病院情報の発信をはじめ医療情報の提供−など、健保組合は先頭をきって医療費適正化対策を実行している。その効果などもあって、平成16年度の数値でみると、1件当たり平均診療費は、被保険者分=政管11、956円、組合11、213円、被扶養者分=政管11、325円、組合9、870円。入院、入院外、歯科別にみても、政管より組合の方がいずれも下回っている。
健保組合は、努力して医療費の節減効果をあげ、医療保険の保険者としての機能を十分に発揮しているのである。しかし、今回の政管健保への国庫負担「肩代わり案」は、これらを全く無視。健保組合の経営努力への意欲を減退させ、医療保険運営への活力を失わせるものである。
しかも今夏、いきなり平成20年度政府予算概算要求に盛られた。本来、こうした医療保険制度の行く末を左右するような問題は、国の社会保障審議会・医療保険部会で深い検討がなされるはず。20年ぶりといわれ、段階実施されつつある医療制度等改革関連法の検討過程にもなかった。「肩代わり案」は、秋になってやっと同審議会の審議俎上にのぼったが、いわば"後出し"。手続き的にも筋が通らぬことである。
折しも健保連・健保組合は11月14日、東京国際フォーラムで、「国庫負担肩代わりを断固阻止する総決起大会」と銘打ち、健保組合全国大会を開いた。大会には組合関係者約4、000人が参加、国会議員も多数駆けつけた。同日の大会では、日本経団連および連合の代表が、経済界・労働界・健保連の三者共同の「肩代わり阻止」活動を強調した。また、日商、経済同友会、関経連からも協調の熱いメッセージが寄せられた。
大会の特別講演で島崎謙治氏(政策研究大学院大学教授)は「肩代わり案」について、「財政調整論は医療保険制度の基本的な骨格論。今回の案では、制度の将来をどう考えているのか見えてこない」と警告した。
新高齢者医療制度への納付金・支援金のねん出、特定健診・特定保健指導の体制整備など、タイトな問題にもかかわらず、来年度実施へ向けて準備を進めた1年であった。そこにまたぞろ無鉄砲な弾丸が飛んできた。
(T・M)