標準的な特定健診・特定保健指導プログラムの確定版が公表されてから半年がたち、各健保組合は計画作成に余念がないところである。
とくに内臓脂肪型肥満に着目した生活習慣病予防のための保健指導では、個人が生活習慣の改善をみずからが選択し行動変容につなげ、かつその結果を出すことが求められている。このことは過去の経験値の延長線上ではない方法を試行錯誤のなかで追い求めていくことになる。
保健指導対象者の選定ロジックに腹囲・血糖・血圧・脂質だけでなく喫煙歴が加えられ、条件付きではあるが喫煙歴が危険因子としてカウントされることになった。
これは、メタボリックシンドロームになると危険因子の数が増えるほど冠動脈疾患の発症の危険度が上がるといわれているが、喫煙歴も大きく影響することを示している。その証拠に、腹囲が85p以上で血糖値のみが異常の場合は動機付け支援であるが、それに喫煙歴が加われば積極的支援となることでも明白である。
一方、がん対策推進基本計画が平成19年6月15日に閣議決定された。目標は75歳未満のがん死亡率を10年以内に20%減らすことと、患者やその家族の身体的・精神的苦痛を軽減する等である。
がんは1981年から日本の死因のトップで平成18年の死亡割合は約30%である。がん死亡率の20%減少案として、5年以内にがん検診の受診率を50%以上に引き上げ、全国の拠点病院で放射線治療および外来科学療法を実施できるようにする等、数値目標が盛り込まれたことは大いに評価できる。
しかし非常に残念なことは、喫煙者の削減数値目標が明記されなかったことである。たばこががんの有力な原因であることは世界の常識である。
がん対策推進協議会では喫煙率の具体的な数値目標を入れるべきとのことで、男性43・3%、女性12・0%の喫煙率を半減させる目標が打ち出された。しかしながら、基本計画としてまとめる際に削減目標が明記されなかったのは、業界の強い圧力があったといわれているし、たばこ事業法が財務省の所管で厚労省が直接タッチできないことも背景にあるようである。
喫煙率の低減はがん対策に大きな効果をもたらすだけでなく、メタボリックシンドロームを起因とする冠動脈疾患の発症の低減にも大きな効果があるのは明白である。厚労省は生活習慣病予防とがん対策で国民の健康を守り、かつ医療費適正化を叫ぶなら、どんな理由があるにせよまず喫煙率を減らす施策を行うことが重要である。たとえば、たばこの値段を大幅に上げる、EU等のようにたばこのパッケージの警告表示を過激にする等方法はいくらでもある。
医療保険者に特定健診・特定保健指導の実施を義務付けるだけでなく、厚労省にしかできない喫煙率低減の施策をすぐにでも実施すべきである。 |