広報誌「かけはし」
  
■2007年9月 No.432

ライフスタイルと 心臓病・脳卒中
   
 8月10日、薬業年金会館で健康教室を開催し、大阪大学医学部講師 大平哲也氏が講演されました。
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  日本人の死因
 

 

大平哲也氏

 日本人全体の死因の1位はがん、2位心臓病、3位脳卒中です。がんは年間約32万人亡くなっています。2位、3位を合わせると約30万人でほぼ同じ人数です。一方、20〜30代の1位は自殺になります。
 がんは日本人の死因の1位ですが、医療費はがんよりも心臓病・脳卒中・高血圧などの循環器疾患の方が多くかかります。
 がんは喫煙者の約75%、非喫煙者の約50%が生活習慣の改善により予防できると報告されています。喫煙者は禁煙することが条件ですが、非喫煙者は、食事・運動により予防できる可能性があります。また、生活習慣改善以外では、がん検診を受けがんの早期発見・治療を行うことが大切です。
 循環器疾患は、8割程度が生活習慣で改善できます。喫煙者、非喫煙者も両方含めて予防できる可能性があります。
 

高血圧の予防は循環器疾患予防の第1歩です

 脳卒中の一番の原因は高血圧であり、心臓病でも高血圧は重要なリスクファクターです。したがって、血圧をコントロールしなければ、どんなに他のものを頑張っても脳卒中・心臓病を減らすことは難しいです。
 血圧と脳卒中の関係をみると、高血圧、すなわち最大血圧値が140oHgもしくは最小血圧値が90oHg以上の人が脳卒中になる確率は、男性では、正常の120/80oHg未満の人に比べると約4倍。160/100oHgで約6倍、180/110oHg以上で約9倍になっています。また、120oHg台でも2倍、130oHg台だと2.5倍の確率になってしまいます。血圧は120oHgまでに近づけた方が望ましいです。そのために生活習慣の改善が必要です。
 食生活では血圧を上げる原因である食塩を減らし、血圧を下げるカリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維を摂取することが大切です。夕食時の飲酒は夜間の血圧を一時的に下げますが、朝方は血圧が上がるので、飲酒習慣のある人にとって朝の血圧測定はとくに大事です。肥満者は昼夜とも血圧が高く、これには睡眠時無呼吸症候群が関係している可能性があります。我々の疫学調査では、睡眠時無呼吸がある人は無呼吸がない人に比べ約1.7倍高血圧のリスクが高く、そのため将来的に脳卒中になりやすいのではないかと考えられます。
 運動・身体活動では、仕事中の歩行時間が少ないほど、血圧が上昇しやすく、毎日身体活動をすると、脳卒中・心臓病・心筋梗塞を予防します。激しい運動でなくても、ウォーキングでも同じ程度予防効果があります。他には音楽・アロマテラピー・森林浴など心身をリラックスすることが血圧を下げる可能性があります。
 血圧はできるだけ家庭で毎朝・起床後1時間以内に測定し、脳卒中・心臓病を予防しましょう。
 

コレステロールと心筋梗塞

 現在日本人のコレステロール値の平均は1980年代の米国人と同じ程度の値に到達しています。日本人の心筋梗塞の死亡率・発症率は米国の4分の1ですが、ここ十数年、大都市勤務者の男性では発症率が高くなってきています。
 血清中のコレステロール値が高いほど心筋梗塞が発症しやすい一方で、コレステロールは血管をつくる材料になるため、値が低過ぎると血管が脆くなり、脳出血が起こりやすくなるという問題が起こります。
 日本人は、脳の奥の細い血管に脳梗塞が起こりやすく、米国人は太い血管に脳梗塞が起こりやすい特徴があります。太い血管にコレステロールが溜まり血管が狭くなり動脈硬化が起こります。日本人に多い動脈硬化は高血圧が主です。細い血管はコレステロールはほとんど関係ありませんが今後、日本人にも米国人型の太い血管の動脈硬化による脳梗塞が増えてくる可能性があります。
 米国人に比べて日本人は、心筋梗塞が少なく、脳卒中が多いのは日本人特有な食生活に関係があります。逆に心筋梗塞が米国人には多いのは、飽和脂肪酸の摂取量が多く、魚の摂取量が少ないのが関係していると考えられます。魚にはEPA、DHAなどのN3系の不飽和脂肪酸が多く含まれており、血液をさらさらにし、中性脂肪を下げる効果があります。そのことが心筋梗塞を予防するのではないかといわれています。また、継続して週3回以上魚を摂取することがいいのではないかといわれています。
 

笑ってメタボ予防

 最後に笑いの運動効果ですが、1日15分間笑うと約40kcalのエネルギーが余分に消費されます。これは脂肪分約6gに相当しますので、笑うことで1年に約2sダイエット効果があるということになります。
 また、よく笑う人ほど、糖尿病・高血圧の有病率が低い可能性がありますので、メタボ予防のためにも大いに笑いましょう。