広報誌「かけはし」
 
■2007年9月 No.432
時評

全国的な運動の展開を
─ 特定健診・保健指導に向けて ─


 わが国の平均寿命は、平成18年簡易生命表によると、男性79.00歳、女性が85.81歳で、男女とも過去最高を更新した。
 このようななか、日本では65歳以上の高齢運転者による交通事故の件数が増加している。平成17年では10年前と比較しても2.4倍増となっている。この主な要因は、加齢からくる判断力や注意力の衰えなどを本人が自覚できていないことにある。
 しかし、高齢運転者のための安全運転講座などで自分自身の動体視力や反射神経などの適性検査を受けると、自分が思っていたより自身の身体能力が衰えていることを知る。すると、その後の運転ではそれを自覚し、注意して慎重に運転する人が多くなるという。
 これに引き換え、我々健保組合の加入員が健康診断を受診後、要再検や要精検などの判定を受けても、再受診している人は意外に少ない。これは、その人が受診後の判定を自身の健康状態の危険信号であるとの自覚が足りないことによる。
 来年から始まる特定健診を受診後、動機付け支援や積極的支援の対象者となった加入員が、特定保健指導を受けても、それを個人の行動変容に結び付けることは非常に難しい。なぜならば、現在、メタボリックシンドロームという言葉はある程度世間で認知されている。しかし、それを放置すると動脈硬化が進行し、心疾患や脳血管疾患など命にかかわる病気になるということ、また、生活習慣の改善で健康な状態に戻ることができるということの理解が足りないからである。残念ながら、このような状況では、期待される成果は得られない。
 現在、各健保組合では、加入員へ、広報誌やホームページなどで特定健診・保健指導の概要を紹介し、周知に努めている。また、健保連の広報委員会でも、秋以降の意見広告のテーマを特定健診(とくに主婦層を中心とした被扶養者の受診を促す)に絞り込み、実施するとのことであり、その成果が期待される。
 しかし、肝心の国による国民への周知・広報などの活動が遅れている。特定健診・保健指導は、国の医療費適正化対策の重要な施策の一つである。早急に、国民にこの制度の必要性を理解してもらい、協力を求める施策を講じるべきである。
 とはいえ、この制度導入で成果を得るための原則は、加入員一人ひとりに「自分の健康は自分で守る」ということを再度自覚してもらうことである。また、「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」というキャッチフレーズのさらなる浸透も欠かせない。そのためにも、我々健保組合だけではなく、国の主導のもと、各医療保険者および各関係団体が今後一層連携を深め、国を挙げての運動として展開していくことが重要である。

  (K・M)