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7月12日、健保連大阪連合会大会議室で健康セミナーを開催し、健保連大阪中央病院 副院長
久保正治氏が講演されました。 |
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◆肥満と肥満症 |
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久保正治氏 |
肥満学会の基準では、BMI22を標準体重、BMI25以上を肥満としています。肥満による健康障害がある場合は肥満症と呼び区別します。肥満に伴う障害は代謝性の種々の異常のほかに扁桃肥大、耳下腺腫大、皮膚線条、膝などの関節変形、下肢の浮腫や静脈瘤など多岐にわたることが知られています。
本来は脂肪組織の過剰を肥満と呼びますので、体重を基準とした評価では、体格、年齢、性差などを考慮できない点に注意が必要です。
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◆肥満の原因 |
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体質の遺伝を基盤として、多食や運動不足が肥満の原因です。摂食に関しては心理的要因が絡み合っていることも多く、豊かな食生活と運動不足に陥りやすい車社会である現代社会では克服しにくい環境にあります。
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◆肥満症に関連する疾患
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糖尿病、高脂血症、低HDLコレステロール血症、高尿酸血症などの内分泌・代謝疾患とそれに引き続いて起こる冠動脈疾患、脳血管障害などの循環器疾患が重要です。そのほか、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群や変形性関節症、月経異常、不妊症があります。
睡眠時無呼吸症候群は無呼吸発作によって夜間の睡眠障害をきたすため、昼間に眠気を引き起こします。これには、治療法がありますので受診を勧めます。
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◆部位別に脂肪組織の
蓄積を評価
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脂肪組織の分布評価にはウエストとヒップの周囲径の比率(W/H比)がよいことが知られていました。女性は脂肪組織を多く持っていますが、脂肪分布の特徴をこれに当てはめると、W/H比が低い場合は下半身肥満、末梢型肥満、臀部・大腿部肥満、洋梨型肥満といえます。一方、それとは反対の脂肪分布であるW/H比の高い場合を男性型脂肪蓄積、上半身肥満、中心性肥満、腹部肥満、リンゴ型肥満と呼んでハイリスクの肥満と評価していました。
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◆CTによる内臓蓄積肥満とメタボリックシンドローム
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脂肪分布評価をもう一歩進めるためにCT検査をすることは、部位別の内臓脂肪量を評価する際に有用でした。すなわち臍レベルの断面積で内臓脂肪量を評価すると、100㎠以上の場合に心・血管疾患のリスクとなることが明らかになりました。
この知見を利用して、どこででも診断できるように日本内科学会をはじめとする関連する8学会が合同で診断基準を作成しました。「メタボ」と呼ばれていることでも分かるように、この反響は大きく、「内臓脂肪の増加を腹囲で評価して動脈硬化のなりやすさを推定する」というメッセージが日本全国に浸透しました。この診断基準を設定した目標はもうすでに半ば達成したと考えられます。
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◆肥満の治療
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食事療法、運動療法が中心ですが食事摂取と心理的な側面は複雑に絡んでいるので無理のない方法で実行するのが基本です。なかでも、絶食療法や単品ダイエットに頼りたくなることもあるかもしれませんが、栄養不足や偏りがあり持続的な治療にならないので勧められません。運動療法も、体力に応じて日々の生活のなかに取り込んで実行するようにするのが基本です。薬物療法は現在のところあまり有効ではありませんが、導入予定の2種の薬剤があります。
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