広報誌「かけはし」
 
■2007年4月 No.427


 

安心・納得の医療制度を

19年度事業計画と予算決まる



 

 健保連大阪連合会は3月27日、グラスミアハウスで総会を開き、平成19年度の事業計画と収入支出予算を決定した。

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 社会保障制度改革は、平成16年の年金、平成17年の介護、そして平成18年の医療と進められてきたが、これからの少子高齢・人口減少社会にふさわしく、また公平で持続可能な制度改革とするためには、なお課題が多く、さらなる改革が必要である。
 さて、医療制度改革関連法は、新たな高齢者医療制度の創設や医療費適正化対策の推進を主な柱として、昨年6月に成立した。健保連では、直ちに会長声明を発表し、今回の改革関連法は、改革の実現に向けての第一歩であり、これまで主張、要請してきた内容の一部が附帯決議に盛り込まれたことを評価するとともに、一方では、公平性の観点での財政調整問題など、多くの問題点が残ると指摘し、今後のさらなる改革につながるものとするために、高齢者医療制度支援金などの負担の歯止めと財政措置、制度運営への費用負担者の参画、特定健診・特定保健指導の実効ある推進方策など重要事項について、その実現を強く求めていく考えを明らかにした。
 また、11月の全国大会では「次世代につなぐ安心・納得の医療制度を」という我々の願いを副呼称に掲げ、@IT化推進による患者中心の医療の実現 A特定健診・特定保健指導に対する国の適切な支援の実施 B実効ある高齢者医療制度の実施と医療費適正化の推進 C保険者機能が発揮できる社会保険方式の堅持の4項目を全健保組合の総意として決議し、改革に臨む決意を新たにした。
 本年度は、平成20年度の医療制度改革の本格的施行を目前にして、@新たな高齢者医療制度の実施に伴う対応 A特定健診・特定保健指導実施に向けての準備 Bレセプトのオンライン化、健診データ管理に関するIT化への対応など課題は多いが、健保組合の事業運営が大きく転換し、また財政的な厳しさも増すなかで、時期を外さず的確に対処していかねばならない重要な年である。
 大阪連合会では、各健保組合、各地区会をはじめ、理事会、各委員会等において、常に問題点を共有しながら、真摯な論議を重ね、健保組合が安定した事業運営ができる医療制度の実現へ一層の努力を続けていくこととしたい。 


  ●総会の経過
 

 加藤会長が議長となり、総会の議事録署名者に、近畿外食産業ジェフ健保組合、生長会健保組合を指名、議案の審議に入った。
 なお、総会開会に先立って、近畿厚生局伊東社会保険管理官からあいさつがあった。 

   
 議案第1号
  平成19年度事業計画(案)
 議案第2号
  平成19年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 

平成19年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること

  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 

平成18年度特別保健福祉事業推進助成事業会計収入支出予算および同説明。
 本部総会において全国一括決議を受けている旨報告、承認された。 

 
 

 以上のとおり、全議案の審議が終了した後、来賓として出席された健保連本部椎名正樹理事から医療制度改革─これまでとこれから─について中央情勢報告が、斎藤正美保健部次長から健保組合IT基本構想について説明があった。
 また、健保連大阪中央病院大橋秀一院長よりあいさつがあり、岩渕勝紀健康管理室長から「生活習慣病センター」の紹介があった。

   
 ○当日の出席状況
  出 席 177組合  
  委任状 27組合  
 ○来 賓
  近畿厚生局健康福祉部
    社会保険監理官

伊東留真運氏

    保険課長

関原 正幸氏

  健保連本部    
    理事

椎名 正樹氏

    保健部次長

斎藤 正美氏

  大阪連合会    
  特別顧問

松本 良諄氏

   

岡澤 元大氏

  顧問

内田 一男氏

   

早司 欣弘氏

 
 加藤会長あいさつ (要旨)

 今回の法改正は大きな枠組みが決まっているだけでありまして、実施段階で実効あるものにするためには、我々が積極的に発言して、適切な中身を盛り込んでいく必要があります。その意味では今年度は極めて重要な年であります。
 新たな高齢者医療制度については、受け皿となる広域連合がどのような役割を果たすのか、我々費用負担者の意見をどのようにして反映させるのか、新たな診療報酬体系をどうつくるのか等を議論して、しっかりした制度設計が行われるように強く働きかける必要があります。
 何より前期高齢者については財政調整の仕組みが残されており、近い将来に、公費の投入が必要であると考えます。
 川崎前厚生労働大臣は最近の講演で、「医療を含む社会福祉給付費の増大は不可避であり、政治家は、選挙で票を失うことを恐れず、消費税の増税が必要であることを国民に正面きって訴えるべきだ」と述べておられます。勇気あるご発言だと思います。
 今回の改革のなかで、最も医療費の適正化の効果が期待できるのは、レセプトのオンライン化であると思います。
 この分野で先進国の韓国では、これにより実質20%の節約ができているといわれています。
 医療実務のための紙代や通信費の節約だけではなく、たとえば支払基金のような組織は大幅な要員減が可能になると思われます。
 医療のIT化によって、医療の透明化が進めば、患者の過剰受診や、医者の側の過剰治療、過剰検査が明るみに出て、問題が明らかになり、節約が可能になることが期待できます。これは医療の質を下げずにできるのであります。
 いま問題になっているタミフルにしても、どうみても世界の80%が日本で使われているというのは異常であります。明らかに過剰投薬ではないでしょうか。今回の死亡事故でこの点が明らかになりましたが、医療のデータ処理が日常的に行われておれば、過剰投薬の事実はもっと早く明らかになっていたのではないでしょうか。
 レセプトのオンライン化の実現のためには何より共通インフラが必要であります。厚生労働省にはもっとしっかり旗振りをするように願いたいものであります。
 今回決まった、保険者による、特定健診・特定保健指導によって、生活習慣病の有病者と予備群を平成20年度に比べ27年度には25%減らそうというのは、世界でも初めての試みであります。これを成功させるためには、我々全体が一つの方向に向かって、共同で取り組むことが必要であります。健保連の2月総会で、特定健診・特定保健指導のデータ処理のために、共同情報処理システムをつくることが決定されました。すでに決まっている公費23億円を開発費として、現在特別委員会で、システム構築の作業を始めています。
 私も委員の1人でありますが、皆さんの使い勝手のよい、安価なシステムをつくるように全力を挙げる所存です。近畿地区では4月26日に第1回目の説明会を予定しており、皆さんからの要望も伺いたいと考えております。
 生活習慣病の予防が重視されるという流れのなかで、大阪中央病院は、この4月から検診棟のキャパシティーを2倍に拡張することにしました。
 健保連直営の病院として、生活習慣病との闘いのために、その機能を強化することにしましたのでぜひとも、皆さんにご活用いただきたいと思います。
 本日の総会の議題は平成19年度事業計画および予算となっておりますので、十分ご審議いただきますようお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。


事 業 計 画
 
基本方針〕
(1)総括
   健保連本部との連携を一層密にして、左記事項について取り組む。
 

@健保連本部と相呼応しながら、理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A政党・国会議員への要請活動は、健保連の主張を国政の場に反映させるため、一層積極的に推進する。
B行政機関とは、健保組合の円滑な運営のため、密接な連携を保つ。
C経営者団体および労働団体との連携強化や、医師会等医療関係団体との意見交換を通じて相互理解を深める。
D「かけはし」「ホームページ」などの広報活動を通じて、健保連の考え方の浸透を図る。
E保険者協議会では、健保組合の意向を踏まえて、医療費の適正化や有効な保健事業の推進に取り組む。
F国保運営協議会では、被用者保険サイドの意向を反映させる取り組みを行う。
G「けんぽれん病院情報『ぽすぴたる!』」への登録促進について、引き続き積極的に取り組む。
H健保連地域懇談会に大阪連合会の意見を反映させるとともに、近畿地区各連合会と連携を図る。
I大阪中央病院の「生活習慣病センター」拡充につき、利用促進を支援する。
Jその他、時宜に応じた諸対策を実施する。 

(2)組織活動の継続強化
 

 大阪連合会の意思決定および情報連絡等が円滑に推進できるように、理事会等を開催する。

 

@理事会および総会を開催する。
A地区正副会長会議、各種委員会等を開催して対策を協議する。
B地区会を中心とした諸活動の充実を図る。
C新年互礼会(第42回)を開催する。 

(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、左記活動を実施する。

@会員組合に提供する情報の充実を図る。
A組合予算編成および組合事務に関し、行政機関および健保連本部と連携を密にして円滑に推進する。
B組合予算編成事務説明会を開催する。
C法律改正に伴う説明会を開催する。
D永年勤続者表彰伝達式を挙行する。
E会員組合に対する交付金交付事業を支援する。
F会員組合のIT化および特定保健指導等の推進に対して支援する。
G会員組合に有効な健保事務(事業運営基準の改定を含む)相談、法律相談、レセプト相談等を実施する。 

 
1.広報活動の推進
 医療制度改革関連法の施行に向けた広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行

@親しみやすく読みやすいものとし、併せて広く対外的な広報誌としての誌面づくりおよびその充実を図る。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療制度等改正関連。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と事業運営。
・大阪中央病院の利用促進。 

(2)広報活動の強化

@会員組合の広報事業を支援するため「広報研究会」を開催する。
A大阪連合会ホームページを充実強化する。 

(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張に対する理解促進を図る。

・地元選出および社会保障関係国会議員
・経営者団体および労働団体
・その他、必要に応じた関係者 

 
2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合のニーズに応えられるよう、法改正施行関連も含め、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上

@「事務長研修会」を開催する。
A「組合業務別実務講習会(適用・給付・徴収・庶務会計関係)」を開催する。
B個人情報保護(特定健診・特定保健指導を含む)にかかる研修会を開催する。
C健保事務相談を実施する。 

(2)組合業務の改善・合理化の推進
    パソコン研修会を開催する。
 
3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化

@大阪社会保険事務局との意見交換会を開催する。
A医師会・歯科医師会および柔道整復師会との意見交換会を開催する。
B大阪府保険者協議会との連携を図る。
C国保運営協議会委員の活動強化を図る。 

(2)支払基金との連絡・調整の緊密化

@事務連絡協議会を開催する。
A審査委員との意見交換会を開催する。

(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用

@医療費の地域格差の是正を推進する。
AレセプトのIT化を推進する。
B柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費にかかる支給の適正化を推進する。
Cレセプト情報管理システム等を活用して医療費の適正化を推進する。 

(4)レセプト点検に関する調査・研究の強化

@レセプト点検に関する研修会を開催する。
A第三者行為にかかる求償事務に関する研修会を開催する。
B地区会レセプト研究部会に、再審査査定事例集を配布し、その活用を図る。 

(5)医療対策室の活動強化

レセプト・保険給付相談を実施する。

 
4.健康開発共同事業の推進と保健福祉共同事業の実施
 「健康増進法」および「高齢者の医療の確保に関する法律」の趣旨を踏まえ、健康教育や保健活動を特別保健福祉事業と連動させて次の事業を実施し、特に特定健診・特定保健指導の義務化に向けた対応を強化する。
(1)健康教育の実施

@メタボリックシンドロームに着目した健康教室を開催する。
A会員組合のニーズを踏まえ、メンタルヘルス等の健康教室を開催する。 

(2)健康・体力づくり事業等の実施

@「健康セミナー」・「健康づくり教室」を開催する。
A「運動習慣普及のための健康づくり運動講座」を開催する。 

(3)保健師活動の実施

@共同設置保健師保健指導事業の利用促進により実効ある保健師活動の普及と円滑な実施を図る(メタボリックシンドロームに着目した保健指導を行う)。
A保健師活動における個人情報保護の徹底を図る。
B保健師連絡協議会への加入の促進を図る。
C保健師活動のレベルアップを図るため、研修会等への参加を支援する。
D健保連大阪中央病院の保健指導事業と連携を図る。 

(4)大阪府保険者協議会との連携
(5)エイズ等感染症対策
    エイズ等感染症に対する正しい知識の普及啓発に努める。
(6)共同利用施設の契約
    体育施設・保養施設の共同利用の契約と利用促進を図る。
(7)プール利用券の斡旋および健康ウオーキングの後援
 
5.総合組合の運営助成
 総合組合の運営に資するため、次の事業を実施する。
   

@総合組合の実態に関する調査資料を作成する。
A地域型健保組合への対応・問題点を調査・研究する。
B再編・統合と事業の共同化を調査・研究する。
C特定健診・特定保健指導の義務化を調査・研究する。
DIT化への対応を調査・研究する。 

 
6.近畿地区各連合会との連携
 諸事業の実施に際しては、必要に応じて近畿地区各連合会と連携を図り、活動を積極的に推進する。
 

平成19年度収入支出予算概要(単位 千円)