広報誌「かけはし」
 
■2007年4月 No.427
時評

パート労働者の社会保険適用拡大
─時間をかけた幅広い論議を─


 今国会に提出された「厚生・共済年金の一元化法案」にパート労働者の厚生年金適用拡大が盛り込まれたところである。
 健康保険にも影響するので、法案提出前の論議経過に注目していたが、厚労省の当初の考え方がかなり修正され、法案提出時の適用対象の考え方は@週20時間以上の労働時間、A月収9万8千円以上、B1年以上の勤務期間に加え、当面は従業員300人以下の中小企業を対象外とし、さらに学生も対象外とすることに落ち着いた。
 この法案提出に至る経緯は、平成16年の国民年金法等の一部を改正する法律の附則に5年を目途に検討を加え、必要な措置を講じるとの検討規定が置かれたことによる。その後、論議が活発になったのは安倍首相の進める「再チャレンジ支援」の重点課題と位置付けられたことが大きな要因となっている。
 重点課題と位置付けられる考え方として、「就職氷河期」にフリーターになった若者がパート労働者のまま厚生年金の適用を受けられない現状を放置することは、将来老後の所得保障においての格差が固定されることにつながり、早急な対策が急務であるといわれている。
 パート労働者の適用対象者は、当初310万人が見込まれていたが、法案提出時の考え方で適用した場合、約16万人と絞り込まれることとなり、パート適用の与党推進派から「大半のパート労働者は無関係で意味がない」と批判も出ているようである。
 パート労働者適用拡大の当初の考え方が大幅に修正された経緯の大きな要因としては、@パート労働者を多く抱える企業の保険料負担の問題、Aパートに従事する者の収入の目減り問題等があるが、当初案について論議を重ねるなかで、パート労働者を雇用する企業の実情やパート労働者の生活実態を重視した形となり、「再チャレンジ支援」に流れている精神にはほど遠い内容となってしまった感は否めない。
 この問題の今後について、法律の施行が平成23年9月予定という時間に余裕のある点や、その間に社会保険の制度等が変化していくことを視野に入れ、パート労働者の老後の生活保障の確保を図るという点を重視した論議が深まることを期待する。

 

  (M・T)