かつて、肥満といえば生活の豊かさを反映しているといわれた時期もありました。しかし、現在では医療費30兆円のうち生活習慣病にかかる医療費は3分の1、10兆円近くを占めるようになり、肥満に加え生活習慣病の有病者とその一歩手前の予備群合わせて糖尿病1600万人、高血圧症5000万人、高脂血症3000万人とされ、年々増加傾向にあるこれらの病気は「国民病」と称されています。
このことから、平成18年6月14日に医療制度改革関連法が成立し、平成20年4月から全国民のうち40歳以上の医療保険加入者(本人・家族とも)に対して生活習慣病の3割から6割が肥満や過体重に起因しているといわれるメタボリックシンドロームに着目した特定健診と保健指導を実施するよう保険者に義務付けられます。
先般、肥満対策を協議する世界保健機関(WHO)と欧州地域事務局管内の53カ国の閣僚会議が開催されました。閣僚会議では大人の2人に1人、子供の5人に1人が太り過ぎで毎年大勢の人が肥満を原因とする病気で死亡していると指摘し、「肥満は子供を含め地域最大の健康問題」と位置付け、高カロリー食品の規制などをもり込んだ「欧州肥満防止憲章」を採択しました。
その他の地域でも糖尿病大国といわれる先進国だけでなく、発展途上国でもその増加が問題視され、さまざまな取り組みがされております。我国でも国を挙げて対策が進められることになりましたが、子供の肥満についてはあまり論議されていません。
文部科学省が発表した「平成17年度学校保健統計調査」によりますと、学校の定期健診で「肥満傾向児」と診断された子供(6〜14歳)は約10%強で、親が子供の世代であった30年前の昭和52年に比べ2倍弱(男女平均)に増加したという報告がなされています。
この子供たちもあと20年もすれば生活習慣病予備群へと移行します。「国民病」と称される生活習慣病を長期にわたり減少させる取り組みであればなおさらのこと、中・高年齢者だけの対策ではなく、子供の肥満に対して「欧州肥満防止憲章」のような対策の取り組みを国に望むところです。 |