昨年は医療制度の大きな改革があり、これで平成16年度の年金制度改革から、平成17年度の介護保険制度改革と続いた、当面の社会保障制度の基本的な見直しが終わったことになる。
今後、議論はそれぞれの改正法の成立の過程で懸案となっていた公費負担の費用捻出について、消費税を含めた税制改革の場へと移ることとなり、我々医療保険者は、これら改正法の円滑な実施に向け全力をあげて取り組むこととなる。
しかしながら、そんななか、早くも一方で、経済財政諮問会議の審議を経て閣議決定された「骨太の方針2006」において、平成23年度における国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化に向け社会保障分野の一層の歳出削減(国ベースで1兆1,000億円)が打ち出されたところである。
このため、今後5年間にわたり、毎年2,200億円ずつ社会保障給付費の伸びが圧縮されることとなり、医療制度への影響も大きく、とくに財政制度審議会等の場で再浮上してきた保険の「免責制度」導入等の動きに目が離せない状況となっている。
さて、今回の医療制度改革であるが、すでに一部の改革は昨年の10月から実施されているものの、制度改革の全容については、依然として不明確な部分も多く、とくに平成20年度からスタートすることとなる、
1.新たな高齢者医療制度について
@前期高齢者医療制度における公費負担の有無は如何に
A支援金、納付金等に対する具体的な激変緩和措置は如何に
B広域連合は保険者機能を発揮し、実効ある運営の可能性は如何に
C後期高齢者医療制度の運営に、費用負担者である我々保険者が関与できる仕組みは如何に
D後期高齢者医療制度において新たに構築される診療報酬体系は如何に
2.「特定健診等」の義務化について
@国の責任において実施されるべきインフラ部分の構築は如何に
A「特定健診等」にかかる財政負担と、被扶養者に対する公費による必要な財政措置は、また、さらにその費用対効果は如何に
B保健指導にかかる要員(マンパワー)の確保は如何に
C後期高齢者支援金に対する公平で透明性のある加減算の仕組みは如何に
D個人情報保護に対する対応は如何に
3.「IT化」の取り組みについて
@実効性あるレセプトオンラインシステムの構築と、その費用負担は如何に
A健保証のカード化に伴う資格確認情報をはじめとする各種情報へのアクセスは如何に
等々、まだまだ先行き不透明であり、これらの結果次第では、今回の改革が真の改革であったかどうかが問われることとなり、加えて財政的な影響もきわめて大きいことが危惧されるところである。
さらに「特定健診等」の実施に向けての取り組みでは、健保組合事業に携わっている多くの方が、このスケールの大きい事業のイメージと自身の健保組合での現実的な実行レベルとの乖離に戸惑っており、おそらく焦燥感も含め、相当ストレスがたまっているのではないかと思われる。
このため「メタボリックシンドローム」の源流は、実は「ストレス」にあるとの分析結果もあることから、これ以上「メタボ」の該当者を増加させないためにも1日も早い制度の全容とその具体的な指針の明示が待たれるところである。 |