我々健保組合にとって、本年は平成20年4月から始まる特定健診・保健指導の実施へ向けて、大切な準備期間の年である。大半の組合では、今後加入者の健診受診率や健診場所、年齢構成、住所などの把握を進めていかなければならない。また、今年度末までには策定されるであろう確定版の「標準的な健診・保健指導プログラム」をもとに、必要な人材確保やアウトソーシングの体制を確立して、特定健診・保健指導計画を作成することとなる。
しかしながら、事業主および被保険者・被扶養者にこの内容がどれだけ伝わり、理解してもらっているであろうか。まだ各保険者にもその具体的内容が見えていない状況のなか、すでに事業主に情報を伝え、費用負担や健診データの提供方法などは調整済みであるという健保組合は少ないのではないだろうか。また、被保険者・被扶養者への情報提供も、まだほとんどできていない状況であろう。
これから各健保組合では、組合会などでこの件を説明し、その準備事業を含めた平成19年度予算案の承認を得ることになる。しかし、一番大切な健診・保健指導の対象者(被保険者・被扶養者)に対し、健保組合として情報を伝える手段は、冊子の配布、機関誌やホームページへの掲載など限られたものしかない。
メタボリックシンドロームの概念に着目した今回の生活習慣病予防の施策は、医療費適正化対策の中心的事業のひとつとして的を射たものである。しかし、生活習慣の改善による健康増進への取り組みは、個人の意思に基づくべきものであり、強制はできない。このことが、この施策を推進して十分な成果を得るための大きなカギである。
平成12年から始まった21世紀における国民健康づくり運動の「健康日本21」は、5年を経過した昨年に中間評価が出された。しかし、その結果は、食生活や運動など生活習慣に関する9分野のほとんどで目標数値に達せず、残念ながら成果が上がっているとは言い難い。この要因にはいろいろなものがあるであろう。だが、一番の原因は、国民への広報活動が不十分で、国民にその趣旨が十分伝わらず、それぞれが自分の問題として生活習慣の見直し(行動変容)ができなかったことにある。
このことからも、健保組合は、健診・保健指導の義務化について、対象者の自発的な取り組みを促すよう、啓発活動を継続的に行っていかねばならない。しかし、最も重要なことは、国が国民一人ひとりにその趣旨と必要性を理解してもらえるよう、早くから徹底した広報活動を進めることである。 |