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中川智左氏 |
病的な肥満症とは、肥満に関連する健康障害、たとえば糖尿病、高脂血症、高血圧、痛風、冠動脈疾患、脳血管障害、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症などがあり、医学的に減量を必要とする病態です。
肥満の程度を表す指標には体格指数BMI(Body Mass Index)=体重(s)/身長(m) が用いられ、BMI=22のときを標準体重、25以上を肥満とみなします。しかし体重が正常範囲内であっても脂肪蓄積が過剰であれば、いわゆる「かくれ肥満」にあたり要注意です。さらに肥満で重要なのは、脂肪の分布状態です。内臓脂肪肥満は上半身肥満、リンゴ型肥満ともいわれ、腹部の出っ張った太鼓腹型で中年男性に多いのに対し、皮下脂肪肥満は下半身肥満、洋ナシ型肥満ともいわれ女性に多い傾向があります。
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●注目されるメタボリックシンドローム
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最近メタボリックシンドロームという疾患概念が話題になっています。これは内臓脂肪肥満に加え、動脈硬化の危険因子が複数あると冠動脈疾患の危険が増大するというもので、ウエスト(臍(おへそ))周囲径で男性85p以上、女性90p以上の人が、脂質代謝異常、高血圧、耐糖能異常のうちの2つ以上を合併した場合に該当します。厚生労働省による最新の国民健康栄養調査の結果をみると、肥満者や内臓脂肪蓄積者が中高年の男性に多数みられることがわかります。女性も閉経後になると増加しています。最近では30〜40歳代でも、このような条件を満たした男性が心筋梗塞一歩手前の状態でみつかる場合が少なくありません。内臓脂肪は皮下脂肪に比べ代謝活性が高く、脂肪の合成・分解が活発です。貯金に例えると、内臓脂肪は普通預金(たまりやすいが取れやすい)、皮下脂肪は定期預金(いったんたまると取れにくい)といったところです。 |
●内臓脂肪肥満はなぜ問題なのか
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ではなぜ内臓脂肪はよろしくないのでしょうか。脂肪細胞はエネルギーの保存庫で身体を防護し飢餓に備えるという大きな役割がありますが、実は最近それ以外にも脂肪細胞にはさまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌する働きのあることがわかってきたのです。内臓脂肪は悪玉のアディポサイトカインを増加させ、善玉のアディポサイトカインを減らしてしまうのです。たとえば悪玉のアディポサイトカインであるTNF─αが増加するとインスリンの働きが邪魔されインスリン抵抗性が増大し血糖が高くなる、アンジオテンシノーゲンが増加すると血圧が高くなる、PAI─1が増加すると血管が血栓で詰まりやすくなる。一方で動脈硬化を抑える善玉のアディポネクチンは減少してしまうのです。その結果、糖尿病、高脂血症、高血圧などを合併して動脈硬化を促進し、虚血性心疾患を発症しやすくなるのです。 |
●望ましい生活習慣とは
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最近の日本人は脂肪、特に動物性脂肪を摂り過ぎる傾向にあります。蛋白質15%、脂質25%、炭水化物60%が理想の栄養バランスです。脂質は動物性:植物性:魚油=4:5:1が目安とされています。脂肪酸の種類では、飽和脂肪酸(動物性脂肪):一価不飽和脂肪酸(オレイン酸=オリーブ油・菜種油):多価不飽和脂肪酸=3:4:3が、また多価不飽和脂肪酸ではω─6系(リノール酸=植物油):ω─3系(αリノレン酸とDHA・EPA=魚油(鰯・鯖))=4:1が推奨されています。またショ糖(砂糖)は内臓脂肪を増加させるので、甘い物や飲料の摂り過ぎもよくありません。薄味を心がけ野菜や食物繊維をしっかり摂り、朝食を抜かず1日3回きちんと食事をして寝る前にだらだらと間食しない。いずれにしても脂質、炭水化物、アルコールなど摂取したエネルギーの余剰分は、最終的には中性脂肪に合成され脂肪細胞に蓄えられますから、食べ過ぎ飲み過ぎは厳禁です。
運動療法も、インスリンの働きをよくし血圧を低下させ善玉コレステロールを増やします。こまめに身体を動かし、ウオーキングやジョギングなどの有酸素運動をできるだけ毎日続けてください。内臓脂肪を減らす大切な手段です。外食や宴会の場でもしっかり考えて行動し、のぞましい生活習慣を実践して適正な体重を維持し、よい健康状態を保てるよう努めてください。 |
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