広報誌「かけはし」
 
■2006年7月 No.418
時評

健保組合の主張をねばり強く訴える
― 実効あるレセプトオンライン化を ―


 2005年の合計特殊出生率が1.25と過去最低を更新したことが6月1日に厚生労働省より発表された人口動態統計で明らかになった。人口推計は年金の財政計算の基礎になっており、今後、負担増や給付削減などの論議が高まってくることが予測される。
 2005年から人口減少社会になり、65歳以上の高齢者はついに21%となり、いよいよ超高齢社会に突入した。このまま推移すると2025年には3人に1人が高齢者という社会になってしまう。
 この大変な少子高齢化のなかで、今回の医療制度改革関連法は成立した。「持続可能な皆保険制度」の大義名分のもと、中身は政府の歳出削減に終始している。世界第2位の経済大国といわれながら、膨大な国の借金を永きにわたり放置し放漫な運営をしてきた政治家、役人の責任は重い。しかし我々の子、孫の世代までそのつけを残すことはできない。涙をのんで痛みを分かち合うことが必要なときなのだろう。
 改正法は、患者(特に高齢者)、保険者(主に健保組合)、医療機関にとって、大きな負担増を伴う内容であり“アメとムチ”をうまく使い分け、大きな反対が予測される部分は経過措置というクッションを入れながらの医療費適正化施策である。
 高齢者医療制度の創設や、増加し続ける医療費を適正化することは、我々の長年の懸案事項であり、法制化されたことは一定の評価をしたい。
 しかし、予算関連ということで早期に成立させる必要があり、十分な論議がされたとはいいがたい。これは21項目にわたる附帯決議があることからも明らかである。今後、その実施にあたっては、我々の主張をねばり強く求めていく必要がある。
 そのなかで、遅れていた医療のTT化推進(レセプトのオンライン請求を2011年から全医療機関に義務付け)は評価に値する。レセプトオンライン化は健保組合の膨大な紙レセプトの事務作業やコストを大幅に軽減する。健保連も「レセプト情報管理システム」の拡張版として開発に乗り出したと聞いており、大いに期待したい。加えて「資格確認システム」も後回しせず、効率化のために同じインフラを使ってほしい。
 ただ、今の仕組みを変えないで電子化したとすると、保険者にとっては大いなる不満が残ることもいくつかあげられよう。たとえば、市町村の公費情報は今のレセプト記載要領では電子データ上には入らない。医薬分業が進んできた現在だが、医療機関と調剤のレセプト突合の仕組みがなく、傷病名と診療行為の妥当性が分からないので、医療費分析などとてもおぼつかない。
 つまりは、複雑な診療報酬体系を包括払的な簡素化された体系に改めるなど、オンライン化と同時に制度や各種システムの充実も必要と思われる。
 保険者が、せっかく診療情報をすべて得られる状況になるのに肝心の審査ができず、ただの支払い機関に成り下がるのでは、なんのためのTT化か分からない。
 その意味で、今回のレセプトオンライン化への拡張システムの取り組みは、大変重要な意義を持つ。

  (Y・S)