広報誌「かけはし」
  
■2006年3月 No.414

 大阪連合会では、村松副会長ほか9名の調査団が、3月1日から4日間の日程で、韓国の保険者組織、審査機関や医療機関など訪問した。
 
●はじめに

 政府・与党の改革大綱のなかで、「平成23年度当初から、原則としてすべてのレセプトがオンラインで提出されるものとする」と明記した。レセプトのオンライン化は迅速で正確な統計分析による医療費の適正化や医療関係事務処理の効率化など、健保組合としても大いに歓迎すべき内容である。同時に「制度の一元化を目指す」ことも示している。
 保険者の使命は効率的・効果的に保険運営することと同時に被保険者に対し適切なサービスを提供することにある。いかに保険者機能が発揮できるかがポイントである。
 これらの諸点に関し、すでに韓国はすべての保険者を1つに統合し、また、レセプトの電子化100%を達成するなどIT化の超先進国となっている。
 大阪連合会として先進的な韓国の実情を把握することが、これからの健保連の活動に資すると考え、意見交換・調査をした。以下、概略について報告する。

  
●訪問先の概要
 

@国民健康保険公団
 地域保険の財政悪化の対策として、2000年に職域保険と統合し、韓国唯一の保険者として発足。財政調整、保険料負担の平準化や給付範囲の拡大が図られたが、地域保険関係者の所得把握が難しく、職域保険関係者との不公平感が課題である。
A健康保険審査評価院
 韓国唯一の審査機関で、1年間で8億件のレセプトを1,500人体制で審査および評価をしている。
 そのうち、90%はコンピュータ審査。EDI(Electronic Data Interchange)システムを導入し、世界初の電子請求時代を実現できた。現在は、100%電子化達成。
Bソウル大学校病院
 1,633床、職員4,600人規模の韓国の中核病院。オーダリングシステムにより、自動的にレセプトが作成できるため、医事課ではレセプト入力の必要がなくなった。
 紙からEDIに変わったため、余力人材を統計分析など病院経営に資する付加価値の高い仕事にシフトすることができた。
Cソウル特別市医師会
 大阪府医師会と相互交流のあるソウル特別市医師会で、保険者の統合・一元化やEDI、情報公開に関する意見を聞くことができた。
D柳韓大学
 「重症患者の会」代表と保険者の統合・一元化、保険給付の拡大や情報公開について意見交換ができた。

  
●総 括
 

@保険者の統合・一元化
 職域保険と地域保険の統合化は大いに問題があることが今回の調査で明確に確認された。最大の課題は自営業者の所得把握であり、韓国でも未だ解決できていない。むしろ、このことが国民の不満を増大している。
 競争のないところに進歩はない。
 職域保険と地域保険の並存こそ、あるべき姿ではなかろうか。
AレセプトのEDI化
 韓国は日本の健康保険制度を参考にしてきたが、レセプトについては独力で世界初の100%EDI化に成功した。
 請求、審査、支払のみならず、韓国全土の医療情報の分析が瞬時にできる画期的体制を確立した。日本政府は2011年度当初から原則完全オンライン化をするとしているが、韓国の先進事例のよいところを取り入れて可及的速やかに完全オンライン化を実現すべきだと考える。