広報誌「かけはし」
 
■2006年3月 No.414

 

 3月6日、平成17年度第2回保健師連絡協議会総会が健保連大阪中央病院で開催され、平成18年度事業計画案と予算案について承認されました。総会後には産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室教授の神代雅晴氏による特別講演会「人間工学からみたVDT作業について」が行われました。


 総会は鮫島真理子会長の開会のあいさつに続き、来賓の三洋電機連合健康保険組合の林勝彦専務理事があいさつ。医療制度改革などについて触れたあと、なお厳しいサラリーマンの労働環境に言及し、「みなさんにはサラリーマンの応援を」と期待を述べました。
 議事は第1号議案でクボタ健康保険組合の吉田保健師から平成「18年度事業計画(案)」の説明があったあと、第2号議案で大阪連合会の吉田事務局長から「平成18年度予算(案)」が提案され、いずれも賛成多数で可決。総会後、大阪連合会の置田榮克専務理事から「健康保険をとりまく情勢報告」(別掲)がありました。


鮫島真理子会長

 

特 別 講 演 会

人間工学からみたVDT作業
 
 

産業医科大学 産業生態科学研究所
 人間工学研究室教授
神代 雅晴氏

   明るさのムラをなくす
 

神代 雅晴氏

 職場におけるVDT作業は70年代中盤に始まり、80年ごろには各職場に普及するようになりました。それに伴って各種指針やガイドラインが定められましたが、現在は各事業者の自主管理に重きが置かれています。VDTのVとDは目とディスプレイの関係、Tはキーボードやマウスなどの端末。VとDの関係で目の問題、Tとの関係で筋骨格系の問題、さらに脳に与える影響からテクノストレスといった問題が生じています。
 画面や机を交互に注視しなければいけないVDT作業で問題になるのが眼球の動きと明るさ、視距離。視線移動は大眼筋に、明るさは瞳孔に、視距離は毛様体に影響を与えます。明るさが目に悪影響を与えるのは暗さではなく、明るさのムラ。オフィス全体の明るさと、机の上の明るさ、あるいはディスプレイとキーボードの明るさにムラがないかどうかを確認します。明るさのムラは明暗順応の問題から眼精疲労を起こします。VDT作業に適正な明るさは300〜700ルクスですが、ムラがある場合はデスクランプを使うなどの方策をとります。また、ディスプレイのグレア(不快なまぶしさ)も目に悪影響を与えます。一番いい対策は蛍光灯の反射を防ぐルーバーをつけることですが、コストがかかるので、入射角が30度にならないように調節するなどレイアウトで工夫します。また、白熱球に近い蛍光灯に変えるのも効果的。あるいは、デスクランプを上手に使って蛍光灯とミックスにするとグレアがなくなります。また、光の色温度も作業に影響を与えます。色温度が高い(赤色から青白色へ)ほど、血圧が上昇し、交感神経が興奮、過緊張をもたらします。このような状態はヒューマンエラーを起こす可能性があるので、休憩時には色温度の低い赤系統の照明を使うのもひとつの手段です。

    離席して筋疲労予防
 

 ターミナル作業は同じ身体部位を繰り返し使い、局所筋骨格系に影響を与えます。自覚症状には目の疲れ、肩こり、腰痛、背中痛、首筋の痛みなどがあります。一定時間座り続けて同じ体の部位を繰り返し使用しているため、こうした症状が発現します。特に使用している屈曲筋よりも使用していない伸展筋が刺激を求めて筋疲労が起こります。もっともいい対策は立つこと。自由に離席できる職場の雰囲気づくりが大切です。
 VDT作業には5つの法則があります。@エルボーの法則 作業中肘が90〜100度の角度になるように机、キーボードの高さを調節します。A視距離は17インチ程度なら45センチ、21インチで65センチ。B画面は見下げる。見上げるとドライアイになります。Cキーボード、鉛筆、マウスなどあらゆるものを肘を中心として描いた円弧内に置くこと。D画面は正面。通常視野の60度の範囲内にすべてを置くこと。

    テクノストレスを防ぐ
 

 もう一つ問題になるのがテクノストレス。コンピュータとのかかわりによって生じるストレス現象で、テクノ依存症とテクノ不安症の2つの類型があります。怖いのは失感情症につながるおそれのあるテクノ依存症。特にタイプA行動パターンの人はテクノストレスにかかりやすいので、行動特性の変容を指導しましょう。また、人間工学の立場からいえば間仕切りを利用すれば人に干渉されず仕事ができるというメリットがあります。臨界距離に入り込まれるとストレスを感じるので、座る位置などでそれぞれが適度な物理的距離を保つ方がいいでしょう。

 

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 今年4月から2年に1回の診療報酬が改定されます。今回は生活習慣病の改善によって医療費の適正化を図ることが盛り込まれています。また、新たにニコチン依存症が保険診療の対象になり、喫煙に関する指導管理料という新項目が設けられました。医療制度改革では生活習慣病、特にメタボリックシンドロームを中心に対応することになっています。40歳以上の被保険者を対象に健康診断を実施、保険者には診断結果に基づく指導が義務づけられ、これによって生活習慣病のリスク軽減を図る方針です。加えて新たに法案に盛り込まれたのが診療報酬のオンライン請求。平成23年から、医療機関は原則としてコンピュータを利用し、オンラインで診療報酬を請求することになりました。
 健康寿命の延長には健診とその後のフォローが大切です。連合会としては被保険者に指導を忠実に守り、真剣に取り組んでもらえるような広報のあり方を検討すべきだと考えています。