広報誌「かけはし」
 
■2006年2月 No.413
時評

医療費適正化に向けて  
積極的な取り組みを


 今通常国会に提出された医療制度改革関連法案は、安心・信頼の医療を持続可能とするものであり、20年後の平成37年度を見据えた長期プランである。
 なかでも増大する医療費の問題は、最大の懸案事項ではあるが、治療重点の医療から、疾病予防を重視した保健医療体系への転換を目指している。
 特に、生活習慣病の予防は、国民の健康の確保の上で重要であるのみならず、医療費の減少にも資することとなる。
 平成37年度の医療給付費は、現行制度ベースでは56兆円となるが、中長期の施策により49兆円と7兆円の削減を見込み、さらに診療報酬を7%下げ45兆円にすると目標設定した。
 だが、この数字の信憑性にはいささか疑問を感じる。平成17年6月の経済財政諮問会議に尾辻前厚労相より出された資料では、平成37年度の医療給付費は59兆円であり、医療費適正化効果として6.5兆円を見込み、52兆円に圧縮するとしていたはずである。
 こんな短期間に医療給付費が3兆円も少なくなり、逆に医療費適正化効果が0.5兆円も増え、差し引き医療給付費は約4兆円も減少している。
 しかも、これら施策の具体的な実施方法については不透明である。
 ある講演会で某教授が長期施策の中身は空で、効果については「真空切り」であると揶揄されていたが、まさに「色即是空、空即是色」、こんなにご都合のよいものなのか。
 それはさておき、医療費の適正化は保険者にとっても最重要課題であり、厚労省が示す指針に基づき積極的に推進する必要がある。
 医療費適正化の中心は疾病予防であり、なかでも生活習慣病については、内臓脂肪型肥満者の多くが、糖尿病、高血圧症、高脂血症の危険因子を複数併せ持つことから、メタボリックシンドロームという新しい概念で管理することとなり、腹囲の測定が必須となる。また、がんは、死亡原因の第1位であり、その予防のため禁煙支援等の生活習慣の改善を進めていかなければならない。併せて、被扶養者も含めた効果的・効率的な健診・保健指導の義務も生ずる。
 ITによる医療の構造改革では、健保組合の取り組むべきテーマとして、レセプトのオンライン化、資格確認システム、個人健康管理情報の電子情報化等があげられており、平成23年度当初の完成を目指している。平成18年4月からは電子画像によるレセプト情報管理システムもスタートするが、IT化は急激に進むと考えられ、健保組合のトータル的なシステム構築も必要とされるのではないか。
 厚労省では生活習慣病の予防を国民運動として展開するとしているが、「健康日本21」の轍を踏まぬように、医療費適正化に向けてそれぞれの健保組合がしっかりと、その役割を積極的に推進しなければならない。

  (I・W)