広報誌「かけはし」
 
2006年1月 No.412
肥満と循環器疾患
 
 「肥満と循環器疾患」をテーマに12月5日、健保連大阪中央病院循環器科医長の松本重人氏による健康セミナーが、健保連大阪中央病院で開催されました。

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   ◆内臓脂肪型肥満とメタボリック症候群
 


松本重人氏

 肥満には皮下脂肪の多い洋ナシ型と内臓脂肪の多いリンゴ型の2つの体型があります。重大な病気を発症しやすいのはリンゴ型の人。皮下脂肪はたまりにくいが燃焼しにくいのに比べ、内臓脂肪はたまりやすく燃焼しやすいのが特徴。しかし、内臓脂肪型の肥満は糖尿病や中性脂肪、高血圧、脂肪肝などさまざまな疾患の要因になるので、治療対象になります。内臓脂肪は身体的な要素、食べ過ぎ、運動不足、ストレス、女性の更年期、飲酒、喫煙などさまざまな要因で蓄積します。内臓脂肪の蓄積を発端に糖尿病、高脂血症、高血圧を発症した状態を「メタボリックシンドローム」と呼びます。
 脂肪細胞から分泌される「アディポサイトカイン」には善玉と悪玉があります。善玉は動脈硬化を修復する物質を分泌しますが、悪玉は動脈硬化を進行させます。脂肪量が増えると、悪玉の分泌が増加し、善玉の分泌が減少するため、動脈硬化が進行し高血圧や心臓病の原因になります。メタボリックシンドロームと診断されるのはウエスト周囲径(へそ周り)が男性85センチ以上、女性90センチ以上に加え、「中性脂肪かHDLコレステロール」「収縮期血圧か拡張期血圧」「空腹時血糖」の3項目中2項目に異常がある場合。脳心血管障害を予防するうえでもメタボリックシンドロームを抑えることが重要です。
 

   ◆ライフスタイルを見直し食事と運動が基本
   肥満の治療の基本は食事と運動です。とくに脂肪を燃やすのは有酸素運動。ウオーキングやエアロバイクなど長時間続けられてそれほど強くない運動がもっとも脂肪を燃焼します。なお、睡眠時無呼吸症候群、虚血性心疾患、骨・関節障害があると、運動によって悪化する可能性があるため、メディカルチェックを行います。また、血圧や糖尿病、肝障害、腎障害のコントロールが悪い人も運動はできません。
 運動は、最初に5分程度のウォーミングアップを行い、30〜90分を目安に時々休みながら汗ばむ程度の強度で継続します。最後にクールダウンも忘れずに。ダンベル体操は有酸素運動ではありませんが、筋肉量を増やすので、基礎代謝を上げる効果があります。コツは筋肉を伸ばすときに力と時間をかけることと、呼吸を止めないこと。ウエイトの重さにはこだわりません。
 食事は標準体重×30キロカロリーが社会生活をするうえで必要なエネルギー量。油分、炭水化物は最低限必要な量を確保します。自分のライフスタイルを見直し、どこに問題があるか、考えてください。また、食事はよくかみ、決められた時間以外は食べない、腹八分目、繊維質を摂るといったことを心がけてください。うまくいけば1カ月で効果が出ます。ウエスト周囲径を測定して、やせたことを実感してください。