広報誌「かけはし」
 
■2006年1月 No.412

 
統合失調症の理解
   
 11月30日、薬業年金会館で「統合失調症の理解」をテーマに、大阪府こころの健康総合センター相談診療部長の漆葉成彦氏による心の健康講座が開催されました。
 
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●統合失調症の症状
 

漆葉成彦氏

 統合失調症は、以前は精神分裂病と呼ばれていましたが、平成14年、日本精神神経学会の提唱で改称されました。発症しやすい年代は比較的若い人。かつては遺伝や家族が発症原因といわれていましたが、現在は「素因+ストレス仮説」が有力です。しかし、元々の原因は何か現在もよくはわかっていません。
 症状には陽性症状と陰性症状があり、もっとも典型的な陽性症状は幻覚です。特に多いのが幻聴、体感幻覚、幻蝕など。被害・関係妄想も陽性症状です。陰性症状は正常にあるべき心理現象が欠落しているもので、感情の平板化や鈍麻、快感消失など。症状はなんとなく違和感のある前兆期から、幻聴が聞こえたり、妄想が活発化したりする急性期、意欲が低下し、睡眠が長くなる慢性期、そして回復期と移行します。初めて発病した人は入院後1年で約4分の3が完全寛解します。しかし、再発しやすいのも事実で、何回も再発を繰り返すと、回復しても元の状態までは戻りにくくなります。


●薬物と休息が治療の基本
 

 急性期の治療は基本的に薬と休息。自宅でこれが不可能な場合は一時的に入院が必要です。回復期の目安は、睡眠時間の短縮や食べ物の味、花の美しさに感動するなど生き生きした感情が復活していること。この時期には薬物療法と併せてリハビリテーションを行います。治療に使用するのは鎮静効果や抗幻覚妄想などの作用がある抗精神病薬。統合失調症は再発しやすいので、再発防止のために薬は飲み続けるほうが安全です。
 

●生活支援の目標と就労
    統合失調症の患者さんは、料理をしたり買い物をしたりする基本的な日常生活能力や対人関係、作業能力など、さまざまな社会生活能力が障害されています。病気とつきあえる技術や生活技術を身につけさせ、生活基盤を援助することが必要です。他者依存型の患者には、余計なことはいわずに、単純に断定的に、繰り返し話すのが適切な接し方。自分で納得しなければ物事を進めない自己啓発型の人は、判断、決定はその人に任せましょう。
 生活技能訓練(SST)という治療法は生活レベルの視点から統合失調症をとらえ、対人コミュニケーションや平均的認知能力の向上によって症状の再発を防ごうというものです。症状の自己管理、余暇の過ごし方、金銭管理、食生活などの能力についてスキルアップを図ります。また、患者に対する家族の対応が再発の可能性と関連しているため、家族には心理教育を実施する必要があります。統合失調症の人の就労は難しい点もありますが、自分で働いて報酬を得ることで症状がよくなる例もあります。雇用の障害者枠に統合失調症の人も入れていただくと、さらに治療が進むのではないかと考えています。