広報誌「かけはし」
 
■2006年1月 No.412

大阪連合会会長  加藤 幹雄

 昨年の最大のニュースを挙げるとしたら、9月の総選挙での自民党の圧勝ではないでしょうか。郵政改革が争点になった訳ですが、この選挙の意義は、日本の将来を見すえて、国民が改革の継続と推進を支持したことにあると思います。この選挙は「小泉劇場」と呼ばれましたが、当の小泉さんも僅差での勝利をイメージしていたそうで、この結果は確かに驚きでありました。日本の改革の難しさは、我々自身の多くが多かれ少なかれ既存の諸制度から利益を得ていることにあり、改革は必ず痛みと犠牲を伴うことにあります。にもかかわらず、選挙では改革の推進にイエスの答えを出したのであります。この結果は日本だけではなく、海外でも高く評価されているようで、これが日本の株式市場での外国資本の積極的な買い姿勢になっていると思われます。
 景気の方も企業の設備投資や、ようやく上向いてきた個人消費により、ゆるやかな回復基調が続いております。既に景気は踊り場を脱したと思われます。スポーツの世界では阪神の優勝、Jリーグでのガンバ大阪の優勝という我々にとっては明るいニュースもありました。
 さて、今年は戌年ということで昨年以上に「ワンダフル」な年にしたいものであります。
 昨年は我々社会保障の仕事に携わる者にとっても重要な一年でありました。健保組合の財政につきましては、組合間のバラツキはありますが、全体として、小幅ながらも黒字となっております。しかしながら、団塊の世代が定年を迎える19年度以降は退職者拠出金の大幅増加によって、組合財政が急速に悪化することは明らかであります。健保にとっての最大の課題は医療制度改革であります。ご承知のとおり、昨年10月に、厚生労働省の改革試案が公表され、12月には政府・与党による改革大綱が出されました。中身に関しては多くの点で評価できると思います。
 医療費については抑制するという方向が明示され、本年からの診療報酬の引き下げが実現しました。物価や賃金が下がっている中で、診療報酬だけが高い水準に推移してきたことを考えればこれは当然のことであります。診療報酬本体の1.36%下げという結果には大いに不満ではありますが、一歩前進でありました。
 遅れていたレセプトの電子化もこれまでの唱えではなく、実現のための期限をはっきりさせたことは評価できると思います。日本の医療にとって悩みのひとつは、医療の現場の基礎データーの整備が極めて不十分であることだと思います。我々が長年求めてきたIT化の実現は医療の効率化のために大いに役に立つと思います。
 最大の問題は高齢者医療制度であります。発表された案では、75歳以上と、65歳以上で高齢者を二分した複雑な仕組みとなっています。また15年の政府の閣議決定で廃止が決まっていた拠出金制度が、財政調整という形で、実質存続するなど、余りにも問題が多く我々には到底受け入れられないものであります。高齢者を支えるためには、現役世代に負担がかかることは避けられませんが、それだけに現役世代が納得のいく公平で透明度の高い制度でなければならないと思います。
 厚生労働省の試案では、ご承知のように健保組合が2200億円の負担増となっていますが、この根拠が極めて曖昧であります。明らかに被用者保険において存在しない人数分を水増していると言わざるを得ません。
 政府は今年の通常国会で関連法案の提出を考えております。新年にあたり、皆様と力を合わせて総力を挙げて、納得のできる、持続性のある高齢者医療制度実現のために取り組んでいく決意でございます。
 我が国の国民皆保険・皆年金制度は、世界に誇るべきものであります。このような素晴らしい制度は世界のどこにもありません。将来の世代にしっかりこの財産が継承できるように、皆様の英知を結集して、この難局に立ち向かいたいと思います。
 最後になりましたが、皆様のますますのご健勝とご活躍を祈念して私の新年のご挨拶とさせていただきます。