|
|
|
11月10日、健保連大阪中央病院で「糖尿病と合併症〜なぜ糖尿病は恐ろしいのか〜」をテーマに、健保連大阪中央病院内科・栄養部兼女性総合外来部長の中川智左氏による健康セミナーが開催されました。 |
|
|
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。 |
|
◆代謝異常から合併症へ |
|

中川智左氏 |
近年、糖尿病は増加の一途で、成人の4〜5人に1人は糖尿病という時代です。特に若い男性に増加しているのが現場の実感です。若年で糖尿病を発症すると、余命が長いため長い年月糖尿病と付き合うことになり、合併症に直面する恐れも高くなります。糖尿病は膵臓からのインスリンの分泌低下やインスリンの作用不足による慢性の高血糖を主な兆候とし、全身の代謝障害を来す疾患。進行すると急性、慢性のさまざまな合併症を起こします。
急性合併症で特に生命の危険があるのが糖尿病性昏睡。そのうち高血糖性昏睡は極度のインスリン不足によって起きるケトアシドーシスと、感染症や下痢嘔吐、脱水などを契機に発症する高浸透圧性非ケトン性昏睡があります。また、糖分を多く含む清涼飲料水の多量摂取によって起こるソフトドリンク症候群も若年肥満者に増加しています。もう一つの急性合併症が呼吸器や尿路、消化器、軟部組織などの感染症。高血糖状態に加え、感染防御に大切な白血球の機能も低下するため、感染が重篤化しやすく、命に関わることがあります。
|
◆恐い慢性合併症 |
|
慢性の合併症のうち、細小血管症は糖尿病発症からしばらくは生じにくいものですが、一旦発症すると回復や完治がきわめて困難。症状は網膜症、腎症、神経障害に代表されます。網膜症は初期から中期には自覚症状がほとんどないのに晩期には急激に視力が低下するもので、成人の失明原因の1位です。血糖値だけでは病状は判断できないので、必ず眼科で眼底検査をする必要があります。糖尿病に罹患してからの年月が長くなるほど発症が増加します。腎症は高血糖によって腎糸球体(毛細血管の集合体)が障害されるもの。微量アルブミン尿からタンパク尿、ネフローゼ状態と徐々に増悪、回復は困難で腎不全になると生命の危険性があり、透析が必要です。しかし、透析は外出が制限されるなど、さまざまな部分でQOL(生活の質)を損ないます。もう一つ恐いのが糖尿病による神経障害。高血糖による血管障害や代謝障害で、末梢神経の伝達作用が障害されます。自律神経障害と末梢神経障害に分けられ、末梢神経障害では痛覚や温・冷覚など感覚の鈍麻、しびれなどが両足の先から足底部、手、指先などに左右対称に進行します。痛みを感じにくくなるため、皮膚病変や末梢循環障害が加わって、潰瘍や壊疽などの重篤な足病変を生じることもあります。合併症の予防には何よりも血糖コントロールが大切。HbA1cを6%台までに抑えることが必要です。
|
◆動脈硬化症にも注意 |
|
大血管症は最近増えている合併症です。大動脈や頸動脈をはじめ大きな動脈の動脈硬化が、糖尿病と高脂血症や高血圧との合併で促進されます。脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などを起こす原因となり、血糖値以外に高脂血症や高血圧のコントロールが必要です。網膜症や腎症などの細小血管症は境界型程度では発症しませんが、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞は境界型でも油断できません。糖尿病患者の死因は以前に比べて心筋梗塞が増加しています。医療関係者が連携し、良好なコントロールを保つことが、健康状態の改善や合併症の予防にもつながります。 |
|
 |